3−1−3 大月断層

大月断層は五助橋断層の北側をこれと平行に走るが,断層面の斜面は垂直に近くて,空中写真で見ると,見事なリニアメントがみられ,地形的にも谷の系統的な屈曲が明瞭である (図3−7) 。

昭和44〜45年にかけて実施された山陽新幹線六甲トンネル掘削の際には,鶴甲工区斜 坑及び本坑において本 断層に遭遇し,破砕著しく多量の湧水があり難工事となった。断層付近に地盤変動測定装置が設置されている。なお,この他六甲トンネル工事の際に掘削された水抜き坑を利用して, 本断層の鶴甲団地への延長上(この部分は土橋断層とも呼ばれる)で,断層直上の構築物の亀裂や変形が見られたが,これは単なる断層両側 の地盤の相違による不等沈下だけではなく,鶴甲山塊を取り去ったために,断層粘土が流動・膨張を起こしたのではないかと考えられている。写真3−3は, 鶴甲団地の造成工事の際に現れた断層露頭であり, 左側の白い部分が破砕花崗岩, 右側が崖錐状角礫層で, 変位量は 8.5mであった。

図3−7 空中写真でみる断層 (六甲山地を北東− 南西に走る五助橋断層と大月断層)  

写真3−3 鶴甲団地造成現場に現われた礫層を切る大月断層の露頭

写真3−4 大月断層の直上部に見られる構築物の損壊状況