2−1 基本方針

兵庫県活断層調査委員会 (1996) の調査では, 神戸・阪神地域の地下には,厚い堆積層(市街地直下で数 100m〜 1,000m余り)が分布し,その中に堆積層の上部にまで影響を及ぼしている活断層が伏在していることが明らかにされた。地形・地質調査などを含めて総合的に検討された結果, 当地域の活断層は, 淡路−六甲断層系(須磨断層,会下山断層,諏訪山断層や,その南側をこれらにほぼ並行して延びる仮屋沖断層,大倉山 断層など)と大阪湾断層に大きく分かれ,その間に和田岬断層が,大阪湾断層から分岐するような恰好で六甲断層系へと延びてゆくようすがわかってきた(図1−1)。そしてその延長にあたる東灘付近の山麓部には,垂直落差 1,000mにも及ぶ大断層が存在する ことが明確になってきた。

しかし, 実際に反射法地震探査を行い, 地下構造がとらえられたのは, 図1−1に示したように神戸市の中心部から東部にかけてであり, 市西部の須磨区,長田区での詳しい調査は行われていない (須磨沖〜有馬街道までの間では調査は行われていない) 。したがって, 現時点での想定では, 断層位置の精度に問題が残されているといえる。今回の地震では,地下構造を含めた深部の情報と一体となった活断層像を把握することが必要であることが認識されており,そのため,神戸市西部での反射法地震探査による活断層調査は是非とも必要であった。

一方, これらの伏在活断層が地表付近の新しい堆積層にまで変形を与え, 最上位の沖積層にまで影響を与えている可能性があることも示唆されていた。さらに, 最近刊行された都市圏活断層図においても, 断片的ではあるが伏在活断層のあらわれとみられる地形面の変形が表現されている。しかし, このような伏在活断層および山麓部に位置する既知の活断層とも, 最近の活動履歴についての手掛かりは, これまで全く得られていな いのが実情である。特に, 1596年の慶長地震では,隣接する有馬−高槻構造線や淡路北部の東浦断層が活動したとの報告があり, これらの中間に位置する六甲断層系が同時に活動した可能性も指摘されている。したがって,今後の六甲断層系の活動を予測するにあたって,最新の活動時期をできるだけ明確にする努力も必要である。

以上,神戸市域では伏在活断層を含めて広い範囲で活断層・地下構造情報を精度良く把握し, さらに最近の活動履歴をとらえることを主な目的として活断層調査を組み立て実施した。