6−2−4 eventの解読

本トレンチでは、少なくとも2回のeventを解読できた。これらを、新しいものからevent−S1、event−S2と呼ぶ。以下に、それらの層準について述べる。

N面の断層F2およびS面の断層F1〜断層F3は、いずれもWa層までを切っているが、V層に覆われている。したがって、Wa層堆積後、V層堆積前にeventが発生したことがわかる。これが本地域における最新のevent−S1である。V層・Wa層の年代値は、それぞれ1,670yBP・4,490yBPであるので(表6−2)、event−S1は約1,600〜4,500yBPに発生したことになる。このevent−S1の層準を精度良く決定するためには、V層基底部の年代が必要であるが、それを見出すことはできなかった。

S面の断層F1は、Wa層を上下方向に約60cm変位させている。Wb層は断層の隆起側に分布していないため、その変位量は不明である。そのため、Wb層がevent−S1以前の断層運動による変形を受けているかどうかについて、直ちに判断することはできない。しかしながら、Wa層の変位をもとに戻しても、Wb層と基盤岩とは断層関係で接することから、Wb層堆積以後、Wa層堆積以前に、少なくとも1回のeventが発生した可能性が高い。これがevent−S2である。

N面において、断層F1がWa層とWb層との境界で折れ曲がることは、このeventに関係していると思われる。Wa層・Wb層の年代測定値は、それぞれ4,490yBP・31,150yBPであるので(表6−2)、event−S2は約4,500yBP〜32,000yBPの間に発生したと考えられる。

断層F1の隆起側にはWb層は分布していないため、event−S1と変位量などを比較することができない。このため、event−S2が1回のeventを示すかどうか、確実な証拠はない。すなわち、event−S2は、複数の活動歴を記録している可能性もある。上記したように、Wa層とWb層との間には比較的長い堆積間隙があるため、複数のeventを想定した方が合理的かもしれない。

また、本トレンチでは、小倉東断層の変位様式が明らかになった。これまでは、西上がりの上下変位量だけしか明らかにされていなかったが、断層条線には上下変位を上回る右横ずれ変位が記録されていることが判明した。断層条線のピッチは15〜30度で、南へプランジしている。相対的な上下変位は西上がりであるので、小倉東断層は、右ずれ量の大きな活断層であることになる。1回のネットスリップは2m程度以上に達する可能性がある。