6−2−3 断層

本トレンチでは、N面・S面ともに複数の断層が認められる。基盤岩に発達する断層のうち、礫層を変位させているのは、断層F1・F2・F3である。いずれも、西側が相対的に隆起している。

N面の断層F1は、基盤岩とWb層とを境している。その走向・傾斜は、それぞれN24゚E・46゚Wであるが、トレンチ底付近では高角になる。断層F1を、上方へWa層と基盤岩との境界に続けると、Wb層とWa層との境界で急激に折れ曲がる(N4.1/3;図6−4−1b)。Wa層は断層F1を不整合に覆うようにも見える。しかし、Wa層中の礫は基盤岩との境界付近で引きづり上げられており(N4−4.2/2.2−3)、両者は断層関係にあると考えられる。したがって、断層F1は途中で急激に折れ曲がるが、Wa層も変位させていることになる。N面のF2の走向傾斜は、それぞれN19゚E・80゚Wであり、上端ではやや低角化する。断層F2は基盤岩中を通り、Wa層を切って伸びるが、V層に覆われる。

S面においても、断層F1はWa層・Wb層ともに変位させている。その走向・傾斜は、それぞれN7゚W・68゚Wである。S面のWa層には比較的明瞭な層理が認められ、Wa層の引きずり変形が読み取れる(S2−3/2.5−3.2;図6−4−2c)。断層F1の下盤側のWb層直上に堆積しているWa層は、上盤では基盤岩を不整合に覆う部分に連続している。ここでの上下変位量は約60cmである。断層面を礫層中に追跡することはできないが、Wa層の変形の様子から、Wa層上部まで断層変位を受けていることは確実である。断層F1は、V層には断層変位を与えていない。S面の断層F2・F3は基盤岩中を通過して、Wa層を切り、V層に覆われている。上端付近では断層面は低角であるが、トレンチ底付近では高角となる。トレンチ底付近でのF3の走向・傾斜は、それぞれN5゚E・84゚Wである。なお、N面の断層F2に連続するのは、S面の断層F2であると思われるが、断層F3はF2と収斂して、ともにN面の断層F2に連続すると思われる。

本トレンチにおいては、基盤岩中では断層面の傾斜は高角で、走向はNNE−SSW方向である。礫層と接する断層面の傾斜はやや小さく、走向も散らばる傾向がある。

S面の断層F1では、比較的明瞭な断層条線が観察できた(図6−4−2d)。条線のピッチは15〜30゚であり、南へプランジしている。相対的な上下方向の変位は西上がりであるので、本断層は右ずれの活断層である。上下変位量が約60cmであるから、条線の傾斜をもとに断層F1の真の変位量を計算すると、1.5〜2.3m程度になる。断層F2による変位量は不明であるので、小倉東断層全体としての変位量はそれ以上になる。ただし、断層条線は、1回の断層運動の途中でも大きく変化することがありうる。したがって、小倉東断層は右ずれ量の大きな活断層であることは確実であるが、ネットスリップ量は参考値にとどめる。