3−1 リニアメントの分布

北九州市周辺地域において、断層の存在と関連して形成されたと考えられるリニアメントを抽出するため、写真判読を行った。全域の判読は縮尺約4万分の1空中写真を使用したが、詳細な判読を要するところでは、縮尺約1万分の1および約2万分の1空中写真判読を実施した。本地域では人工改変が顕著に進んでいるところがあるため、なるべく人工改変が進む前に撮影された、米軍撮影および1960年代国土地理院撮影の空中写真を用いた。

写真判読結果をもとに、小倉東断層周辺のリニアメント分布図を作成した(図3−1)。これらのリニアメントのうち、第四紀(とくにその後期)確実に活動していると判断されるものは、小倉東断層以外には認められなかった。小倉東断層は、後述の河成段丘面を切り、北北東−南南西方向に伸びる明瞭なリニアメントを形成している。

頓田断層と福智山断層は、南北あるいは北北西−南南東方向に連続する。頓田断層周辺においては、断層変位地形と推定される地形の異常が認められたが、現在では人工改変によって原地形はほぼ消失している。福智山断層は遠賀川右岸の山麓を限る活断層と想定されている(活断層研究会,1980)が、今回の写真判読においても、明らかな変位地形を認めることはできなかった。このため、図3−1においては、福智山断層をやや不確実な活断層として表記した。福智山断層の存在・活動度に関しては、今後さらに検討を継続してゆく。

このほか、ほぼNE−SW方向のリニアメントが、比較的多数分布する。これらのリニアメントのほとんどは、延長の短い直線状谷から成り、断層に起因する構造とは思われない。多くのリニアメントの走向は白亜系の構造と一致するため、堆積構造を反映した組織地形であると考えられる。ただし、比較的連続性が良く明瞭な鞍部列を伴うものは、古期の破砕帯が差別浸蝕を受けて形成されたと推定できる。また、足立山の南東麓では、九州自動車道にほぼ沿うように東西ないしは北北東〜南南西方向へ伸びるリニアメントが認められる。既存の地質図等には断層としての記載はないが、このリニアメントは山地と低地とを境する比較的明瞭なリニアメントであるので、古い構造線の存在を推定した。河成段丘面には変位は認められない。