(3)河成堆積物の堆積状況および変形

(1)東側法面E14〜E17付近の地層の乱れ

E層は東側法面E06〜E14ではほぼ水平に分布し,東側法面E14付近で下方にたわんでいる。E14〜E17では、礫層が引き伸ばされたように変形し、部分的に薄くなる。この付近では地層境界が不規則で、部分的に不明瞭となっている。また、個々の礫の配列をみると、東側法面E06〜E14ではほぼ水平に配列していたものが東側法面E14では砂、礫層のたわみにあわせて礫の配列も下方に垂れ下がるように変化している。これは、ほぼ水平に堆積していたE層が、堆積後にE14付近で下方に“Vの字状”にたわむように、変形したと考えられる(図7−5−3写真7−2)。地層変形の原因は、断層活動や地震動に起因する液状化、地すべりなどが考えられるが、いずれもトレンチ観察からは直接的な成因を特定する証拠は認められなかった。

図7−5−3 東側法面E15付近でのE、DおよびC層の変形状況

写真7−2 東側法面E13〜E15の写真

E14でB層、C層およびD層が“Vの字状”にたわんでいる。 D層も東側法面E02〜E14ではほぼ水平に分布するが、東側法面E14でE層と同じように下方にたわむ。同様にC層も下位のD層との境界が東側法面E11〜E14ではほぼ水平であるが、東側法面E14付近でD層とE層と同じように下方にたわむ。また、C層では東側法面E11〜E14で水平な砂粒の配列がみられ、E15〜E18では礫分の多い部分がほぼ水平に続くが、E14付近で途絶えている。

C層とその上位のB層との境界は、ほぼ水平に連続し、下位のC〜E層にみられるような地層の乱れ、変形等は認められない。また、B層およびその上位の@、A層には地層の乱れはみられず、全体としてほぼ水平に分布している。

このように、東側法面E14付近ではC〜E層において、層厚の変化・構成粒子配列の変化などの系統的な乱れが認められる。

また、D層とE層はE17からE18にかけて10×20≠ナ南へ傾斜する明瞭な境界で接し、この境界の北東方延長部ではB層とC層の境界部が下方に湾曲しているのが観察される。B層とC層の境界の湾曲は、D層とE層が断層関係で接するとすると、この断層により変形を受けた可能性がある。しかし、この部分を詳細に観察すると、D層とE層の境界は明瞭だが平坦でなく、凹凸があり全体としてうねっているおり(図7−5−4写真7−3)、また、この部分で実施した軟X線撮影写真観察では、断層面や断層に伴い形成される組織・構造等の乱れは観察されなかった(7−5−3.(4))。これらのことから、D層とE層の境界は断層面ではなくB層とC層の境界の湾曲も断層による変形と考えるよりも、堆積時に形成された可能性が大きいと判断される。

図7−5−4 東側法面E17付近のD層とE層との境界

写真7−3東側法面E17付近の写真

B層とC層との境界は凹凸があり、全体としてうねっている。

(2)南側法面S05付近の地層の乱れ

E層は砂礫を主体とする地層であるが、南側法面S04〜S05付近では層相が変化し、礫混じり粘土が主体となる。個々の礫の配列からはほぼ水平な構造がみられるが、S05のE層の砂礫とF層との境界付近では、見かけ上礫が上方に跳ね上がるように分布する。また、その直上の礫混じり粘土を主体とするE層中でも、個々の礫の配列がS05で付近で乱雑になったり、折れ曲がるようにして分布が途絶えるなど地層の乱れが認められる(図7−5−5)。

D層の層厚はS05で部分的に著しく薄くなる。この部分は、下位のE層が乱れている所の直上である。また、直上のC層には、顕著な地層の乱れ等はみられないが、D層との境界が不規則となっている。B層より上位の地層には、特に異常な構造はみられない。

以上のことから、東側法面E14〜E17と同じように、C層堆積後にC層とその下位の地層が何らかの影響で乱された可能性が強いと考えられる。

図7−5−5 東側法面S05付近でのD層およびE層の変形状況

(3)東側法面E08付近の地層の乱れ

東側法面E08では、E層の上面に凹状の窪みが存在し、その窪みに上位のD層が落ち込み充填している形状がみられる。D層下部にはE06〜E08にかけ礫の混入が比較的多い部分がほぼ水平に分布するが、E08では連続性が乏しくなっている。特に、窪みの南西側(図7−5−6)では、礫の多い部分が下方に落ち込むようにたわんでいる。D層の直上に分布するA層と、その上位の@層には特に地層の乱れは観察されない(図7−5−6)。軟X線撮影観察でも断層面や断層に伴い形成される組織・構造等の乱れは観察されなかった(後述)。これらのことから、本箇所でみられる特異な構造は、断層の活動に起因する変形とするより、地層の堆積時に形成された可能性が大きいと判断される。 図7−5−6 E08付近でのE層およびD層の変形状況

(4)軟X線撮影

(1)〜(3)で述べたトレンチ法面に観察された構造が、断層の活動による変形であるかどうかを判断するため、軟X線撮影による観察をおこなった。図7−5−7に撮影試料採取位置を示し、写真7−4に軟X線撮影写真を示す。その結果、断層面や断層に伴い形成される組織・構造等の乱れは特に観察されなかった。しかし、軟X線撮影観察の対象とした地層は、未固結で軟弱な完新世の堆積物であり、断層活動があったとしてもせん断や破断などの構造をX線像として観察できるようには十分に保存されていなっかった可能性もある。

図7−5−7 軟X線撮影試料採取位置

写真7−4 軟X線撮影写真

   a〜eいずれの写真にも断層の存在は認められない