(1)地形面の判読

北武断層周辺の丘陵丘頂部平坦面〜緩斜面は、大楠山を中心とした標高170〜40mにわたって、断片的に多数分布している。太田ほか(1982)は、平坦面の一部を小原台面に対比している。崩壊地形は長坂およびその西方に多数分布し、東方地域ではまれである。

今回の空中写真判読では、谷底平野を断層に沿った地域で判読し、完新世河成段丘高位面群・同中位面・同低位面に3区分した。中位面では断層による横ずれ河谷において、上流側の流路が横ずれしてきた隣りの河谷に河川争奪されている例が数多くみられる。横ずれ河谷が争奪された地点には風隙が生じ、争奪された河川は流路が短縮されたことによって回春し、河成段丘低位面になっている所もある。

野比海岸の海成段丘面については、太田ほか(1994)に従って表示した。完新世海成段丘面は北武断層の南側では3段(上位からHM1面, HM2面,HM3面)に分類され、秋谷海岸においても3段の海成段丘面を識別できる。しかし、海成段丘面の分布地域は両海岸地域共に人工改変のために、完新世における断層変位地形は明らかでない。