5−1−1 文献調査

調査対象断層である神縄・国府津−松田断層帯、地震性地殻変動によって隆起したと考えられる大磯丘陵の完新世段丘に関する調査成果や文献、地割や地層の乱れ等が記載されている考古学資料を収集・検討し、同断層帯についての現状を把握した。また、残された問題点を抽出し、平成14年度以降の調査方針、場所、方法を考える資料とした。

国府津・松田断層に関しては、最新活動時期は約2800〜2900年前とされているが、広域に確認された地すべりの活動時期を根拠にしており、断層本体の変位は確認されていない。また、最新活動時期の1つ前の活動時期についても詳細は不明である。

大磯丘陵の完新世段丘に関しては、中村原面、前川面、押切面のうち、最高位の中村原面の年代は約6300年前(松島,1982)であることが明らかである。前川面の離水時期は4000〜4500年前後(遠藤ほか,1979)とされている。押切面の離水時期は、遠藤ほか(1979)では完新世テフラのS−24(弥生時代中期〜16世紀:上本・上杉,1996)よりも古いと推定され、太田ほか(1982)では、少なくとも約1000〜1200年前、松田(1985)では、鎌倉時代よりも前、関東第四紀研究会(1987)では、5世紀頃〜室町時代頃とされている。このように前川面、押切面に関しては、構成層や年代を特定するための十分なデータが得られていない。

地割や地層の乱れ等が記載されている考古学資料に関しては、これら考古学的イベントとトレンチ調査等の既往調査で確認された地質学的イベントは良く対応しているが、不確実な部分が多く、今後の調査結果をふまえて、再検討する必要がある。