3−2−4 観測結果

図3−7−1図3−7−2図3−7−3図3−7−4図3−7−5図3−7−6に、P波観測の現場モニター記録例を示す(AGC4000ms)。図では、人工震源(バイブロサイス)から生成された弾性波を、地表に設置した100〜496カ所の受振点で同時に観測した波形を並べて表示してある。横軸は受振点位置、縦軸は弾性波の到達時間(往復走時時間、ミリ秒)に相当する。参考のために、地形図上に発震点・受振点をマークした測線図を対比した。

記録例では、表層基底層を伝播した初動屈折波(直線的な波の並び)および、それに続く反射波(双曲線的な波の並び)等が確認できる。初動屈折波の見かけの速度は約2km/sが認められる。一部の記録(VP413)で垂直往復走時1.3秒付近に明瞭ではないものの基盤からの反射が確認できる。この基盤深度以浅には、複数の連続する反射波が確認できる。これらは、第三紀または第四紀の堆積層に相当すると考えられる。3.0秒以降は、連続する強い反射面は確認できない。

具体的に詳しくみると、VP221の記録(小田原市沼代〜坂呂の道路上、バイブロ3台、フォース90%、スイープ16回)では、初動が3km程度届いている。見かけ速度4.4km/s、TOが0.5秒の基盤屈折波が明瞭である。VP1の逆打ちを考えると、大磯丘陵の地下構造について、基盤速度4〜4.4km/s、堆積層速度2km/s、基盤深度0.5km程度と推定される。一方、西向きの基盤屈折波は、足柄平野のノイズが大きくて確認できない。

VP413の記録(小田原市成田、バイブロ3台、フォース90%、スイープ16回)では、初動が東端付近8km程度まで届いており、その見かけ速度は、V1=2km/s(オフセット0〜2km、TO=0.0秒)、V2=4〜4.4km/s(オフセット2〜6km、TO=0.5秒)、V3=5〜5.5km/s(オフセット6〜8km、TO=1.2秒)と大別できる。また、1.1秒の基盤反射波が弱いが確認でき、速度はV3のものと考えられる。一方、西向きの基盤屈折波はノイズが大きくて確認できない(平野内のノイズレベルは、山に比べて20dB以上ある)。

一方、高分解能発振区間約3kmでは、ミニバイブ1台、4スタックを用いて合計199点の発振を行なった。二つの南北の主要道路を結ぶ県道であるため、交通量が多くノイズレベルが高く、また、道幅がせまいため渋滞しやすく大型車両が来るとバイブレーター退避させる必要があった。大体オフセット300m程度は初動が読め、0.1、0.2秒程度、および場所によるが0.4秒程度に反射が見られた。

取得記録の卓越周波数は、20〜30Hz程度であり、発振点による周波数成分の相違は認められない。すべての震源から表面波の発生が見られる。また、一部の記録では表面波に先行するかたちでチューブウェーブと呼ばれるノイズが混入した。これは、発振点、受震点の双方に水道管または下水管等の埋設管が存在する場合、この埋設管を伝播する波のことである。実際には、データ処理においてこれらを除去することができ、解析上問題はなかった。