5−3−2 F層の分布を用いた単位変位量の推定

トレンチ法面、断層追跡溝および水平ボーリングなどの結果を考慮して作成した地質断面図においてF層の分布形態に着目すると、F層基底の高さは、東側および西側法面で約1mの高度差がある(図5−2のAとA’)。

また、断層の走向方向における両層の分布は、初声層と宮田層の谷壁位置(図5−3のBとB’)のずれ相当の食い違いがあり、上盤側のF層は下盤側のF層より少なくとも2m西側に分布する。上盤側におけるF層の西側分布限界が明らかになっていないため、両層の食い違い量は明確にできないが、少なくとも2mであり、最大量については言及できない。

鉛直方向の約1mおよび水平方向の最低2mのずれは、最新活動で生じた地層の変位量とすることができる。

したがって、単位変位量は以下のように試算できる。下記の数値は、断層が垂直の場合であるが、南下浦断層は傾斜70°以上の高角度であるため、断層の傾斜を考慮しても、変位量はほとんど変らない。

 鉛直変位量:約1.0m

 水平変位量:最低約2m

 単位変位量:最低約2.2m

上記のように、単位変位量は、E2層の分布から最大約2m、F層の分布から最低2.2mの単位変位量が推定される。

E2層の分布から推定した単位変位量は、次に示すような不確定な要素がある。しかし、F層の分布から推定した単位変位量は、確認された地層を基にしているため、信頼性が高い。

・E2層は、水平ボーリングblBH−1で確認された標高19mにおける初声層谷壁の上部標高および谷壁位置の西側に分布する可能性がある。

・谷壁位置からE2層の有無を推定しているため、推定量は信頼性が劣る。

したがって、菊名トレンチにおける最新活動の単位変位量は、F層の分布から推定した値となり、最低約2.2mとする。