5−1 概要

南下浦断層は比較的明瞭な断層地形からなる(太田ほか,1982;太田・山下,1992)。トレンチ調査は1箇所で実施されている(神奈川県,2000)。 南下浦断層については伊藤ほか(1970)がボーリング、地表踏査によって断層位置を調査した。たとえば、三浦市黒崎における直線的な崖は人工のもので、約20m南側に断層崖が埋没していることを明らかにした。ここでは伊藤ほか(1970)、 太田・山下(1992)などにしたがい三浦市南下浦町蛭田から三浦市黒崎までとし、長さは3.7kmとした。 南下浦断層の東西両端は海中に入るが海域の資料はないので不明である。

南下浦断層は右横ずれと南上りの成分をもつ(太田ほか,1982など)。横ずれについては年代が明らかな変位基準がないため正確には決められないが、太田ほか(1982)は三崎面を開析する谷の右ずれ量50mから平均変位速度として0.8m/1000yを算出している。この値は当時の段丘年代観(6万年前)によるもので、最近の三崎面の年代(8万年前)で再計算すると0.6m/1000yとなる。

上下成分について、垣見ほか(1971)は宮田層(更新世中期)、三崎砂礫層、東京軽石、立川ローム層基底の変位量を記載し、それぞれから0.03〜0.3mm/yという上下成分の平均変位速度を求めている。地質分布からみると南下浦断層は南側の三浦層群初声層と北側の宮田層とを境しており、その変位は南上りである。松島(1976)、垣見ほか(1971)などによれば、南下浦断層の変位様式は第四紀中期頃に北上りから現在の南上り・右ずれになったと言われる。南下浦断層の活動度は右横ずれ主体のB〜C級と推定されている(太田ほか,1982;活断層研究会,1991)。