3−5 杉村ほか(1999)のようろしトレンチの再検討

杉村ほか(1999)のようろしトレンチでは、北武断層の最新活動とそのひとつ前の活動が報告されている。これによると、断層活動は1,430〜1,490年前と、1,570〜12,510 年前(可能性が高いのは3,070〜6,250年前)である。そこで杉村ほか(1999)のようろしトレンチの結果について再検討を行なった。ようろしトレンチの位置を図3−13に、主要部分のスケッチを図3−14に示す。

ようろしトレンチの西側壁面ではFR6断層がR3h層を切りR3e層に覆われることが確認されている。断層活動時期はR3e層 / R3h層となる。断層を被覆するR3e層の年代としては1,650±80y.B.P.,1,960±60y.B.P.,2,130±70y.B.P.があり、最大限を考慮し、これらのうちで最も若い年代である1,570年前(1,650−80)となる。断層により切断される年代としては、R3h層の年代が不明なためにその直下のR3i層の年代(6,190±60y.B.P.)を用いる。これも誤差を考慮して6,240年前となる。したがって、最大限でみると北武断層の最新より一つ前の断層活動は1,570〜6,240年前の範囲となる。

さらに本報告ではこの検討に東側壁面のR3f層(2,890±160y.B.P.)とR3e層(3,140±70y.B.P.)を加え、以下の2つの解釈にしぼりこんだ。

@:R3f層はR3e層と同時異相とみなせるので、上記の断層活動時期はR3f層 / R3h層に限定される。年代値としては約2,900年前〜6,200年前(R3f層〜R3i層)の間である。

A:西側壁面のスケッチをみると、FR6断層でR3h層の基底面に高度差がない(図3−15の丸印)ので断層はR3h層を切っていないと考えることもできる。その場合は断層活動時期はR3h層 / R3i層である。年代値としては、断層を被覆するR3h層の年代が不明なためにその直上のR3g層の年代(3,140±70y.B.P.)を用いる。したがって断層活動時期は約3,100年前〜6,200年前(R3g層〜R3i層)の間である。

以上のように、ふたつの解釈は地層区分のうえでは異なる時期であるが、結果的には年代値としては大きく変わらない。ここではふたつの解釈とも否定しきれないので、北武断層の最新より一つ前の活動時期を約3,000〜6,200年前とする。