3−3 調査結果

はじめに、ボーリング(Kt−B1)を行い、地質の概要を把握した。これによると表層部4mには砂丘砂が認められた。砂丘砂の直下には黒色の腐植層(図3−10のE,F層)があり、その年代は1,850±70y.B.P.が得られた。また,E,F層最下部に天城カワゴ平軽石(2,800〜2,900年前,町田・新井,1992)と思われる白色軽石層が堆積していた(図3−8)。以上のことからE,F層はこれまでの研究から断層変位を受けているはずであると考えた。

そのため、重機を用いて深さ約2.5mの第1トレンチ(図3−5)を掘削し、砂丘砂が断層変位を受けていないことを確認した後、トレンチ底からジオスライサー調査を行った(図3−6)。しかし、断層推定位置ではジオスライサーによって断層は確認できなかった。そこで、断層推定位置を含む南側に第2トレンチを掘削し、同様にジオスライサー調査を行った(図3−7)が、断層は確認できなかった。ジオスライサーの調査はE,F層の高度差に注目して行なったが、調査の過程でジオスライサーによる地層の深度には数10cmの誤差が生じることがわかり、E,F層の変位を見逃している可能性があったので、第2トレンチを深さ約4mまで掘り下げ(図3−7の拡大第2トレンチ)、E層を直接、連続的に確認することにした(図3−9)。

その結果、第2トレンチの底盤で断層は確認されなかった。しかし、各トレンチ法面、ジオスライサー断面およびボーリング柱状図を投影し、総合的な地質断面を描くと(図3−10)、E層上面の高度がジオスライサー3を挟んで南西側と北東側で高度不連続を生じ、南西側が約60cm高いことが明らかになった。

ボーリング(Kt−B1)では深度10m付近で緑灰色の粘土層を変位させる断層が確認されている[図3−3(1)(2)]。この粘土層は、直上の腐植質砂層最下部の年代が6,080±70及び6,050±80y.B.P.(図3−10)であることから、6,100年前より古い沖積層の堆積物であると考えられる。この断層はボーリング(Kt−B1)でのみ確認されたので、再確認するため、ボーリング(Kt−B2)を追加掘削した。Kt−B2でも同様に深度10m付近で緑灰色の粘土層を変位させる断層が確認された[図3−4(1)(2)]。ボーリングコアでは傾斜方向が不明なため、図3−10では後述する反射法探査結果にしたがい北傾斜としている。また、仮に南傾斜としてもジオスライサー2、1、4などに延長が達するはずであるが、断層は認められなかった。