(2)地形地質踏査結果から

(1) 地質情報

地形地質踏査は,引橋断層を横断する小沢を中心に地形地質情報を集めた。踏査の結果,地層の走向・傾斜は,引橋断層を境して上盤・下盤側ではほとんど変化していないことが明らかになった。このことは,初声層が南下浦断層の近傍で急傾斜構造を示すのとは対照的である。

露頭における断層は,引橋断層と同方向の走向を持つ小断層が数多く観察される。しかし,それらの断層面は固結・密着していることから,最近の活動を示すものではないと考えられる。小玉ほか(1980)で示された初声層の小地溝および小地溝中の宮田層の分布は,地形改変などにより確認できない。

(2) 地形情報

空中写真判読および昭和39年発行の地形図では,引橋断層に沿う断層変位地形は明瞭に現われている。現地調査においても,三崎面の撓みや沢・尾根の屈曲は明瞭である。

引橋断層は明瞭な変位地形を伴うが,露頭からの地質情報は限られている。したがって,今後の調査では地質精査による情報収集を行うよりも,調査ボーリングや物理探査などの手法を用いて,引橋断層の地下情報を数多く集めることが,断層位置を特定する上で有効と考えられる。