(1)金田地区の地質調査結果から

断層を高角で横断する測線上で行ったボーリング調査結果は,断層による地層の変位や変形を捉えることはできなかった。金田地区の地質構成は,下位より初声層,谷底堆積物および盛土であり,小玉ほか(1980)で示された初声層中の小地溝および小地溝中に堆積しているとされる宮田層は,確認できなかった。

地表からの二次元比抵抗探査やボーリング孔間の比抵抗トモグラフィでも,断層や小地溝を示唆するような比抵抗のコントラストは識別できなかった。

引橋断層は初声層内の断層であるため,断層位置の抽出が困難になっている。つまり,地質境界断層であれば,断層を境した物理量の違いから物理探査手法を用いて,断層は捉えやすく,地質踏査やボーリング調査においても,地質境界断層は把握しやすい。

したがって,今後の調査で引橋断層の位置を捉える場合は,ボーリング調査においては密度を高くする,または,傾斜ボーリングを用いるなどの工夫が必要である。また,電気探査においては分解能を高くして,あるいはγ線探査や浅層反射法などの物理探査手法も選定して断層位置を特定する必要がある。