(3)初声層と宮田層の変形

トレンチのり面において,断層付近の初声層は局部的な破砕が認められるが,宮田層では著しい破砕は見られない。地質断面図上の宮田層の層理面が10°前後で南傾斜を示すことに対し,断層周辺の宮田層は断層活動による引きずり変形の累積を反映する20°〜30°の北傾斜を示している。

西側のり面で行った断層追跡溝における変形は,トレンチのり面で見られる変形とは異なっている。断層追跡溝における宮田層の変形は,トレンチのり面に比べ著しい。

断層に近接する宮田層は,断層に調和的なせん断面によって数cmオーダーで切られており,宮田層のシルト層は階段状の変形構造を示している。変形した層理面は約60°の北傾斜を示す。したがって,断層に近接する宮田層は,せん断によって地層が切られると同時に,断層沿いに引きずり変形を生じたと考えられる。宮田層の変形状況は,blB−2孔のボーリングコアの性状と一致している。

初声層の変形はトレンチ壁面で認められたものと同様であり,初声層は断層沿いに約10cm以下の幅で破砕している。断層から離れるにしたがって,初声層の変形は不明瞭となっている。