1−3−6 総合解析の概要

菊名トレンチで確認できた断層は,南上がりの高角逆断層成分を伴う右横ずれの変形様式で,その最新活動時期は約20,000〜22,000yrsBPである。南下浦断層の変形様式は,他の三浦半島断層群と同様である。三浦半島断層群を構成する断層は,断層間の距離が短く,互いにほぼ平行して分布し,同じ変形様式を示すことから,まとめて一つの断層帯として評価してよいと判断できる。

しかし,南下浦断層の最新活動時期は衣笠,北武,武山断層などと比べ,一桁古い年代であり,更新世末期〜完新世における南下浦断層の活動度は低い。したがって最近の断層活動は,衣笠,北武,武山断層が主になっている。

南下浦断層が単独で活動した場合の地震規模は,マグニチュード7クラスである。しかし,三浦半島断層帯が地下深部で一つの断層に収斂した場合,地震規模はさらに大きくなる可能性があり,三浦半島断層群全体でみた活動間隔は短く想定する必要がある。さらに,三浦半島断層群がプレート境界に収斂する場合においては,三浦半島全体で想定すべき地震規模は,マグニチュード8クラスとなる。

したがって,南下浦断層を含む三浦半島断層群における今後の調査課題は,三浦半島断層群を構成する各断層の相互関係を明らかにすることである。大深度反射法探査などにより,地下深部における断層の相互関係を明らかにし,三浦半島断層群全体の活動度,活動間隔などを解明していく必要がある。