(2)ボーリング調査結果

葛葉台地点では,トレンチ調査によって秦野断層の本体を確認することができなかったので、断層本体を含めた構造を明らかにするために、2本のボーリング調査を行った(図24:B−4(5m)、B−5(20m))。B−5は秦野断層の本体位置から上盤側へ10〜20m離れていると推定される。

観察されたボーリング地質柱状図(1:100)を図25に示す。本地点における地層は、ローム層と礫層(段丘堆積物)より構成される。ローム層は礫層を介して3層準に認められる。これらを下位よりローム層T、ローム層U、ローム層Vとする。

次に層相を示す。なお色調は土色帳による。

表土:B−4ではGL0.00〜−0.60m、B−5ではGL0.00〜−0.70mを占める。

本層は黒〜黒褐色をなす腐植質シルトである。細礫が混入し、全般的に不均質である。本層はトレンチのA1層に対比される。

ローム層V:B−4ではGL−0.60〜−3.88m、B−5ではGL−0.70〜−1.95mを占める。上半部は腐植質で黒〜黒褐色を呈し、下半部は褐色〜赤褐色である。φ3〜8mmの赤〜暗褐色の主に富士山起源スコリアを含み、最下部は砂礫質である。B−5では本層の最上部に宝永スコリアが観察される。上部層は、S−5、S−0、Y−141−3に対比されるスコリアを挟む。下部層のロームはY−141−2〜Y−129に対比される。しかしB−5では、下部層は薄く(B−4で層厚約2mであるのに対して、B−5では0.3m)、Y−141−1しか認められない。

一方トレンチ内では、Y−129まで認められる。B−5ボーリング位置は、トレンチと金目川の間にあたることから、ここでは金目川によって侵食されたためY−129〜Y−140テフラが欠如していると考えられる。

本層は上部がトレンチのA2層に、下部がB層に対比される。

尾尻礫層(尾尻面構成層):B−4でGL−3.88m以下、B−5でGL−1.90〜−11.55mを占める。

主に大礫サイズの亜角礫で、マトリックスは細砂〜シルトである。GL−5.19〜−5.38mにはローム質細砂が挟まれる。下部へ行くほどマトリックス部分が多くなってくる。

本層はトレンチのC層に対比される。

今泉礫層上部:B−5でGL−11.55〜−12.71mを占める。

上半部(GL−11.5〜−12.0m)では黄褐色の淘汰の良い中砂よりなる。下半部(GL−12.00〜−12.71m)では中礫サイズの亜角礫よりなり、マトリックスは細砂〜シルトでマトリックス分が多い。

ローム層U:B−5でGL−12.71〜−16.0mを占める。

黄褐色〜赤褐色を呈し、塊状のシルト質部と、淘汰の良い砂質部との互層をなす。全般的に黒褐色〜橙色のスコリアが含まれ、上位のロームはY−109(GL−13.52〜−14.00m)及びY−108(GL−14.00〜14.45m)テフラに対比され、下位のGL−15.55〜−15.65mはY−105〜Y−107層準のいずれか(武蔵野ローム層上部相当)に対比される。

今泉礫層中部:B−5でGL−16.00〜−17.34mを占める。

黒褐色または灰オリーブ色を呈し、砂または中礫サイズの亜角礫より構成される。マトリックスはシルトである。GL−16.55〜−16.65mにはスコリアが混入しY−105テフラに対比される。

ローム層T:B−5でGL−17.34〜−19.03mを占める。

赤褐色〜黄褐色を呈し、黒〜暗褐色スコリアを含む。本層はY−100〜Y−103(武蔵野ローム上部相当)に対比され、全般的に風化が進み斜長石が浮き出ている部分もある。

今泉礫層下部:B−5でGL−19.03〜−20.00mを占める。

中礫サイズの亜円〜亜角礫層あるいは砂質シルト層より構成される。礫層のマトリックスはシルトで、マトリックス分が多い。

B−5コア内には、断層の可能性があるせん断面がGL−18.23mの位置に認められた。このせん断面は約20°傾斜しており、マンガンが濃集して黒色を呈している。また、GL−13.08〜−14.96mでは、ローム質砂層の逆グレーディングが2カ所認められる。しかし、明確な層序の繰り返しや地層の急傾斜は確認できなかったので、秦野断層本体の位置は確認できなかった。

B−5ボーリングは秦野断層本体が通過する推定位置の上盤側10〜20mで掘削しており、したがって秦野断層本体が北傾斜45°程度の逆断層であれば、断層本体はB−5コア内を通過するはずである。しかし現段階では、確実な断層面は確認できなかったので、断層面が急傾斜になっておりB−5コアのさらに深部を通る可能性もある。