(5)総合解析

今回の空中写真判読及び地形調査によって,従来より高い精度で活断層の位置を大縮尺地図上に明示することができ,また変位を受けている地形の幅を明らかにすることができた.これは防災上の基礎資料として活用されるべきものである.とくに渋沢断層は大磯丘陵と秦野盆地の地形境界を形成するものとして,また秦野断層は盆地北縁の一部を形成するとともに秦野盆地内の人口密集地域を横切るものとして,今後の精査が必要である.八幡断層を除く各活断層は幅の広い顕著な撓曲崖,それに伴う山側への逆傾斜などを伴っているのを特色とする.しかし活断層の長さはいずれも比較的短い.またどの活断層も,少なくとも最近約10万年以内における変位の累積を示し,秦野・渋沢両断層系は鉛直方向だけでもA級の活動度をもつことは確実であろう.

これらのことを考えると,調査対象地域の活断層のうちで比較的長く,活動度の大きい渋沢・秦野両断層は,起震断層の可能性があるものと考えられるが,国府津−松田断層の活動とも密接な関係をもつ可能性がある.したがって,これらの活断層の最新活動期・単位変位量・活動間隔等を明らかにすることは,極めて重要な課題である.

そのためには,両断層の位置が明らかで若い面を切り,かつ精査可能な地点を選定する必要がある.低角逆断層であり,かつ人口密集地域であるため,地点の選定はきわめて困難であるが,現段階では図1−20に示した2地点 (◎印) を詳細調査候補地とする.