(4)秦野盆地及びその周辺のテフラ層序と年代

1970年代以降,当地域一帯のテフラ連続柱状図がほぼ完成し,テフラ層序学的な地形地質調査が進展した.本格的な調査は上杉ほか (1982) によって行われ,テフラ層序に基づく活断層調査が可能となった.本地域のテフラ層序を,関東第四紀研究会 (1986;1987) の層序表を上杉・関東第四紀研究会 (1994) の修正にしたがって,一部訂正した上で示す (図1−6).

図1−6には,地層・地形面とテフラ層序との関係が示されている.たとえば,約10〜8万年前の木曽御岳第一軽石1 (On−Pm1) 期の古富士系テフラをY−1番としてY−141番 (1.1万年前) までが古富士系テフラである.S−0−1番テフラ (10,500年前) からS−25 (宝永スコリア層:1707年噴出) までが新富士火山系テフラである.

足柄山地〜秦野盆地〜大磯丘陵一帯は,風成堆積物以外に,箱根火山から噴出した東京軽石流TPflによって厚く覆われた地点が多い.とくに,秦野盆地南西部川音川〜四十八瀬川一帯は完全に埋め尽くされ,一時流路が変更されたと推定されている (古賀,1982).

表1−2.主なテフラの絶対年代

図1−6.大磯丘陵・秦野盆地のテラフ層序(関東第四紀研究会、1987)

図1−7.調査地域の表層地質図(関東第四紀研究会、1987より抜粋)

これらのテフラ・火砕流のいくつかは,絶対年代が測定されている (表1−2).新期ローム層の上部の年代は1〜3万年前 (14C年代),TP (東京軽石) はその直後に噴出したTPfl (東京軽石流) の14C年代から,約5.2万年前,新期ローム層最下部の年代は約8〜9万年前 (ESR・TL年代) である.その他,本地域に分布するテフラのうち,最下部の多摩下部ロ−ム中から,39−46万年前というFT年代が得られている.