2−2 調査項目

ア 実施した調査項目 (手法) とその項目を選択した経緯の概要

(ア) 文献調査

調査項目・指針を立案するためには,調査地域の活断層に関する既存の研究成果に基づき,明らかになっていること,問題として残されていることを明らかにする必要がある.このため,秦野盆地の活断層に関する既存の研究成果を収集し,その内容を検討した.また,断層活動に対する基準となる地形面の形成年代や断層の活動度を検討するために,既存のボーリングデータを収集した.

(イ) 大縮尺の空中写真判読とその図化

活断層の位置や変形帯を正確に図示することは,防災上極めて重要な課題である.しかし,すでに存在が報告されている活断層であっても,それらの詳細な位置や延長が正確に示されていない場合がある.また,それら以外に,これまでには知られていない活断層が分布するか否かを検討する必要もある.

これらの課題を検討する上では,変形帯を詳細かつ面的に観察することのできる空中写真判読が最も有効な調査手法の1つである.縮尺8,000〜10,000分の1程度の大縮尺の空中写真を用いれば,比高数10cm程度の起伏まで読み取ることができる.

このような観点から,本調査では大縮尺の空中写真判読を行い,これをもとに地形面・変形帯をマッピングした.近年,秦野市周辺では都市化が進み,人工改変によって原地形が残されていない地域が多い.このため,空中写真は,1952〜54年米軍撮影のものと,1970年代に国土地理院が撮影したものを使用した.写真判読は,まず4名の委員が独自に行い,その結果を委員会で検討し,統一的見解に達するようにした.

(ウ) 現地地表調査

文献調査及び空中写真判読結果は,最終的には現地調査によって確認する必要がある.文献調査・空中写真判読によって,とくに重要な地点を絞り込み,効率的かつ集中的に現地調査を行い,表層地質の性状や変形量・様式を明らかにすることを目的とした.

(エ) 断層を横切る地形断面測量

活断層による変形が断層線周辺に集中的に現れている場合は,断層変位量を明かにすることは比較的容易である.断層線のごく近傍で,地表の標高差を測定すればよい.ところが,断層線を挟んで数100m程度の範囲が変形している場合には,その変形範囲を完全にカバーするように測量を行い,地形面の勾配変化を考慮して変形量を求める必要がある.秦野盆地の活断層は低角の逆断層である可能性が高く,このような断層に沿っては広範囲で地形が撓む (撓曲) ことが普通である.写真判読及び現地調査によって撓曲変形が明らかになれば,精密な地形断面測量が必要となる.また,活断層の活動の累積性を検討するためには,同一断層で切られる異なる年代の地形面の変位量を実測して,綿密に検討する必要がある.

イ 添付図表

表1−1 調査数量一覧表