3−4 地震規模の想定

地震によって地表に現れた断層(地表地震断層)の長さ(L)と最大マグニチュード(ML)の対応関係について、過去約100年間の日本列島陸域で統計的な処理を行った松田(1975)65)の式(下記の<1>式)がある。

ML=(logL+2.9)/0.6 …………………………<1>

ここで、ML:最大地震のマグニチュード

L :地表地震断層の長さ(km)

伊勢原断層の総延長は約13qである。この数値から<1>式を用い、最大地震のマグニチュード(ML)を求めると、

ML=6.7(L=13q) 

となる。

単位変位量(1回の活動に伴う変位量:D)と最大マグニチュード(MD)の対応関係について、松田(1975)65)の式(下記の<2>式)がある。

LogD=0.6MD−4.0 ………………………………<2>

ここで、MD:最大地震のマグニチュード

D :単位変位量(1回の活動に伴う変位量)(m)

単位変位量(D)は、今回の調査では垂直成分の変位として、北金目のD=1.0mが得られている。

伊勢原断層の傾斜角度は、平塚市から伊勢原市にかけての大深度反射法探査の結果によれば約50゜、平塚市北金目の浅層反射法探査の結果によれば約50〜60゜である。水平成分を見込まずに、傾斜面(50゜と仮定)での変位量に換算すれば、北金目でD=1.30mとなり、<2>式を用いて最大地震のマグニチュード(MD)を求めると、

MD=6.9(D=1.3m:北金目)

となる。

地表で追跡できる活断層(地表地震断層)の長さは、震源断層の長さと等しいか、あるいは、それより短いとするのが一般的である。したがって、防災的見地から安全側に立って、伊勢原断層の1回の活動による最大地震規模はM7と想定するのが妥当と考えられる。

《伊勢原断層に伴う防災上の留意事項》

@各種構造物の耐震化への留意

伊勢原断層の活動については切迫していないと考えられるが、その規模から想定される地震動について、建築物への影響はもとより構造物、とりわけ交通施設への影響については、その設計や点検の際には活断層の影響について適切に留意していくことが必要である。

A地盤災害防止への留意

伊勢原断層は県中央部を縦断しており、その周辺に沖積低地が広がっていることを勘案すれば、液状化等地盤災害に留意する必要がある。