(3)浅層反射法探査・ボーリング調査・トレンチ調査(日向地区)

@浅層反射法探査(S−3)では、立川ローム層以深で西傾斜の反射面が確認されたが、解析精度上から地表付近の地層を切っているかどうかの判断は困難である。

A主としてボーリング及びトレンチ調査の結果をまとめると、図3−1−2の地質断面図となる。図中、B1−5とB1−4は、両ボーリング間で地層の連続性がないことから、基底部の腐植物の年代からみて落差はあまり大きくないが、B1−4とB1−5間の地形境界部(丘陵の西縁)に断層が推定される。

B図3−1−2に示す各礫層は西方から流下した日向川扇状地の堆積物で、その地層傾斜は本来は東傾斜であったと考えられる。または、ほとんど水平の場合もあり得るが、西傾斜ではない。これを前提に考えると、各時代の変動が読み取れ、各地層間の変位量をまとめると図3−1−3のようになる。すなわち、調査したB1−1〜B1−4の範囲内では、

・変位*T:変位量1.8m(武蔵野礫層Mg上面〜立川礫層Tcg−1上面間)

・変位 U:変位量4.3m(立川礫層Tcg−1上面〜Tcg−2上面間)

・変位 V:変位量2.6m(立川礫層Tcg−2上面以降〜宝永期Ho以前)

となる。トレンチ調査の<地盤変動*V>(表2−5−5)は、この変位Vに含まれる。これらはいずれも東上がりで、全体として累積性を有する。変位Vは広域火山灰(AT)を基準にした場合3.4mとなるが、風成のためやや不確実である。これらをもとに日向地区の地層の平均変位速度を計算すると表3−1−1のようになる。ただし、変位Uの変位速度は、0.61m/千年と他地区の結果から推定される値と比較して2〜3倍の値となり不自然である。伊勢原断層が実際に短期間でこのように大きく変位した可能性も完全には否定できないが、活断層がほぼ同様の変位量、同様の周期でくり返し活動するという考え方(断層運動の反復性)とは整合しない。この点は今後の検討課題である。したがって、日向地区の平均変位速度は、個々の変位量ではなく、合計の変位量から求めた0.22m/千年が妥当と考えられる。

*(注) 変位T〜Vは図3−1−3における各礫層の変位・傾動を示し、地盤変動は表2−5−5に示した地層の傾動・侵食・堆積および地すべり等の現象を指す。

図3−1−2 日向地区地質断面図

図3−1−3 日向地区変位量説明図

表3−1−1 日向地区の平均変位速度

C以上の変位量・変位速度は、日向川扇状地の末端部の撓曲変形のみの値である。実際には扇端部の平野と丘陵の地形境界部(B1−4〜B1−5間)にも断層が推定されており、丘陵地を形成した東上がりの断層運動があったと思われる。ただし、今回の調査では変位基準・変位量・活動時期が明確ではなく、地形境界部の断層運動を明らかにすることはできなかった。この断層運動を考慮すれば、日向地区全体の変位量と変位速度はさらに大きくなる可能性が残されている。これは、今後の検討課題である。

Dトレンチ調査の解析結果から日向地区の断層運動・地震等に起因すると考えられる地盤変動は3つあるが、確実なものは地層を傾動させた<地盤変動 V>F泥炭層、もしくはS−22テフラ(H層中)の撓曲変形(圧密沈下と複合)である。時期は約2000yBP以降、1707AD以前で、これが最新活動時期である。