(2)地質概要

図2−2−1に示す地域ごとの地質概要を以下に要約する。なお本調査では、この後に行われた地質精査と重複する地域があり、この地域に関する詳しい記述は2−5地質精査の項で述べることにする。

@青野原−宮ヶ瀬地域

山地を構成する丹沢層群、愛川層群分布し、道志川と串川の流域には立川面構成層、武蔵野面構成層が分布する。 

A宮ヶ瀬−煤ヶ谷地域

宮ヶ瀬湖は調査開始当初から貯水池の湛水が始まっていたため、踏査可能な地域のみ建設省宮ヶ瀬ダム工事事務所の許可を得て行った。宮ヶ瀬周辺は丹沢層群、愛川層群からなる山地で、青野原−煤ヶ谷線が通過すると推定される箇所は大半が崖錐に覆われており断層露頭を確認できなかった。川弟川支流の谷沿いに一部粘土化した破砕帯と思われる露頭が確認された。しかし、露頭の条件が悪く、新しい地層の変位については確認できなかった。また、断層の変位基準となる第四紀層は、武蔵野面構成層、立川面構成層層及び崖錐などが分布するが、ダム工事に伴う人工改変がなされており、断層変位地形や断層露頭を確認することはできなかった。

煤ヶ谷周辺は立川面構成層が小規模に分布するだけで、大半は丹沢層群、愛川層群からならなる山地で、断層変位地形や断層露頭を確認することはできなかった。

B煤ヶ谷−柳梅地域

新第三系から構成される山地の間を小鮎川が通過し、流域には立川段丘礫層、立川ローム層及び崖錐などの第四紀層が分布する。柳梅付近の小鮎川東岸に堆積する崖錐堆積斜面に低断層崖と思われる高さ2〜3mの崖が500mにわたって直線状に認められた。

本地域は地質精査地区(清川村柳梅地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

C柳梅−日向川地域

文献調査、地形判読によれば伊勢原断層は本地域の北部柳梅付近でB煤ヶ谷−柳梅地域までの北西−南東方向から北北西−南南東方向に変わるところである。本地域の北部は大部分が山地で変位基準となる第四紀層はほとんど分布しない。また、清川ゴルフ場では大規模造成がなされている。地形判読によると、このゴルフ場の北方で立川段丘面を活断層が通過するが、現在は人工改変により断層変位地形や断層露頭を確認することはできない。

南部では、立川面構成層、武蔵野面構成層、下末吉面構成層が分布する。調査地域中央付近の上谷戸の立川ローム層中に開口〜密着の亀裂が確認された(巻末資料2−@:SA−2)。伊勢原断層は文献調査、地形判読の結果から七沢川を挟んで東側の山裾に沿って通過すると推定されているが、崖錐堆積物や人工構造物が表層を覆っており、今回調査では断層露頭や断層変位地形を確認することはできなかった。

神奈川県内広域水道企業団(1970)14のボーリング調査によると青野原−煤ヶ谷線は七沢川の西側に幅10〜60m(最大200m)の破砕帯を伴って伏在していると推定されている。また、神奈川県温泉研究所地下水調査グループ(1970)15)によると深井戸資料と電気探査の結果により、伊勢原台地と丹沢山地にはさまれて沈降によって形成された地溝状の谷が埋没しており、愛名面(七国峠面)以降の堆積物が埋積していると推定し、これを“伊勢原埋没谷”と呼んでいる。この埋没谷の北側は調査地域中央部の上谷戸付近まで連続していると推定されている。この埋没谷は神奈川県内広域水道企業団(1970)14のボーリング調査において七沢川から日向川にかけての基盤岩の上面に谷状の起伏があることを確認している(付図4:@−@´断面)。

なお、本地域南部は地質精査地区(日向地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

D日向川−西富岡地域

伊勢原断層は文献調査5,15,19,40,52)、地形判読の結果によると、久保屋敷から南へ延びる丘陵地の西縁部の崖付近を通過すると推定されている。断層の西側は日向川によって形成された扇状地が広がり、断層の東側は愛川層群の巡礼峠礫岩・砂岩・泥岩から成る丘陵地となっている。日向川扇状地礫層は立川段丘礫層に相当し、愛川層群は武蔵野ローム層と立川ローム層に覆われていることとが、露頭で確認された。

実蒔原古戦場付近の日向川扇状地と丘陵地の境界付近は扇状地面が逆傾斜し西側に緩く傾斜している。これは、東側隆起の断層変位による撓曲・傾動の可能性が高い。

なお、本地域北部は地質精査地区(日向地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

E西富岡−峰岸地域

本地域の西部から南部にかけては 鈴川が形成した扇状地(武蔵野面)が広がり、扇端部では鈴川、渋田川が形成した立川面が分布する。この立川面は扇状地の末端部で武蔵野面を取り巻くように放射状に分布する。東部では愛川層群の巡礼峠礫岩・砂岩・泥岩からなる丘陵地となっている。

地形判読の結果によると伊勢原断層は、西富岡では主要地方道相模原・大磯線に併走し、東海大学病院りんどう寮(東名高速道路南側)がのる孤立丘の西側の崖を経て国道246号線の板戸交差点西側を通過する。峰岸団地付近では断層推定位置の両側に立川面が分布し、東川の立川面は扇状地の傾斜とは逆に西側に傾斜している。一方、峰岸団地付近は凹地を成している。

東名高速道路より南方では住宅や工業団地となっており、人工改変のために断層露頭や断層変位地形を見いだすことは困難である。

なお、本地域は地質精査地区(峰岸地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

F伊勢原台地地域

本地域は、沖積低地との比高が20m前後の台地から構成されている。この台地は神奈川県温泉研究所地下水調査グループ(1970)15)によると、大半は下末吉面に対比される。また、後述するボーリング調査においても下末吉面であることが確認された。

伊勢原断層は文献調査、地形判読の結果によると、この伊勢原台地の西側の崖付近を通過すると推定されている。今回調査においては、断層露頭は確認できなかったが、台地に堆積する武蔵野ローム層、立川ローム層中には多数の小断層や亀裂が確認された。

なお、本地域南部は地質精査地区(岡崎地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

G岡崎−南金目地域

本地域の大半は起伏の少ない沖積低地から成り、鈴川や金目川の流域には自然堤防と思われる微高地が点在する。

なお、本地域北部は地質精査地区(北金目地区)に選定しており、詳細は2−5地質精査結果で述べる。

H大磯丘陵

東側には金目川、鈴川、渋田川が形成した沖積層が分布し、中部から西部には立川面構成層〜多摩面構成層及び鷹取山層が分布する