(2)北金目トレンチの結果

図2−5−7−1図2−5−7−2図2−5−7−3参照)

(1)北金目トレンチの地層構成

地層はほぼ小段より下が泥炭層と粘土またはシルトとの互層で、多数のスコリア層を挟む。トレンチ底面近くでは軽石質白色火山灰(TF)が層厚1p前後で、断続しながらもほぼ連続的に観察できる。泥炭層は未分解のものが多いが、中上部は腐植土化している。小段より上位は新期の粘土層、シルト層、砂層、砂礫層が不整合で何層も堆積している。下位より@〜Rと区分した。

@有機質粘土層      Bシルト層 D泥炭層(TF挟在)

A泥炭層     C有機質粘土層   E有機質粘土層(SC1挟在)

F泥炭層  Kスコリア質黒色土層 P砂礫層(MD2挟在)

G有機質粘土層(SC2挟在)  L砂礫層   Q砂層

H黒色土層     M泥炭層(SC4挟在) R表土及び耕作土

I泥炭層         N粘土層(MD1挟在)

J黒色土層(SC3挟在)   O粘土混り砂礫層

(2)北金目トレンチでみられた液状化 (図2−5−7−1参照)

トレンチ壁面の観察から、地震動に起因する原堆積構造の乱れ(液状化と呼ぶ)が6層準認められた(下位よりL1〜L6とした)。このうち、L1の剪断構造、L2のレンズ状ひきちぎれ構造及びL4の泥炭層の火炎状の乱れが顕著である。L4はS−24−5スコリアを乱している。

(3)地層の傾斜 (図2−5−8−1図2−5−8−2図2−5−8−3参照)

本トレンチの地層傾斜(標高差)はわずかであるため、主な地層の下面の標高について水準測量を行った。

測量図によると、いずれの地層も多少とも傾斜しているが、相対的に下位の2層(TFとSC1)の傾斜が大きく、その上位層は傾斜が小さいか、ほとんど水平である。特に最上位の粘土層(MD1,MD2)はほぼ水平である。しかも、下位の〔TF〜SC1間〕では、N面、S面とも西側に傾動しており、〔SC1〜SC2間〕ではN面の傾斜がやや弱いものの、ほぼ西側へ傾斜していると言える。

結局、TF層及びSC1層は西側へやや大きく傾斜し、SC2〜4層はほぼ同様に小さく西側へ傾斜していると言える。

(4)北金目トレンチからみた断層活動の考察

トレンチでみられる6層の液状化層は何回の地震によるものか定かではないが、複数回の地震動によるものと考えられ、いずれかが伊勢原断層自体の活動に該当する可能性がある。

一方、本トレンチの地層傾斜はわずかで高度差は35pにすぎないが、下位のTF〜SC1間、及びSC1〜SC2間での傾斜が最も大きく、トレンチ西側ではE等の粘土層の層厚が厚くなっている。地層の傾斜も合わせて考えるとこの層厚変化は断層活動後の層厚調整の可能性も考えられるが、本トレンチの範囲内だけでは断層の活動時期や変位量を認定することが困難である。