4−3 地形・地質補足調査結果及び平成10年度調査地点・内容

出水断層帯は, 前述のように,文献調査結果及び空中写真判読結果によると,西側から, 内木場セグメント, 宇都野々セグメント及び矢筈峠セグメントの3セグメントに大別され, これらは大局的には「ミ」型の雁行配列を示す。

本断層帯の全体について, まず補足的に,国土地理院が撮影した縮尺2万分の1及び縮尺4万分の1の空中写真を用いて,リニアメント及び地形面の判読を行った。その結果を図4−2に示す。

リニアメントについては, 地形の明瞭さ,連続性,形態,年代,比高などの要素に基づき,以下のLA , LB , LC 及びLD の4ランクの基準に従って,断層変位地形である確実性について検討を行った。

LA リニアメントは,変位地形と認定される複数の地形要素あるいは新しい基準地形に変位の累積がめられ,他の成因による可能性が否定でき,かつ,その位置が確実に認定できるものである。LB リニアメントは,LA リニアメントとほぼ同様で,他の成因は考え難いが,新しい基準地形での変位がやや不確実か,あるいはその位置がやや不明瞭なものである。LC リニアメントは,変位地形と推定される地形要素が認められるものの,新しい地形面上での変位が不明か,あるいは新しい基準地形に認められてもその比高が小さく,延長が短いため,他の成因による可能性が残るものである。LD リニアメントは,直線性のある地形が認められるものの,基準地形が古いか,その地形の開析が進んでいるため,あるいは,新しい基準地形に認められてもその比高が小さく,延長が短いため,変位地形かその他の成因によるものか識別が困難なものである。

出水断層帯では,LA リニアメントは判読されず,内木場セグメント及び宇都野々セグメントにおいてはLB , LC 一部LD リニアメントが,矢筈峠セグメントにおいてはLC 及びLD リニアメントが判読される。

段丘面については, その分布高度,面の保存状態等によって分類し,高位面をH1面〜H4 面に, 中位面をM1 面及びM2 面に, 低位面をL1 面〜L4 面に区分した。その他に, 入戸火砕流堆積物の堆積面, 扇状地面等を抽出して示した。

空中写真判読結果及び平成9年度調査結果を参考に, 本断層帯の全線にわたり地表地質概査をした。

断層周辺に分布する地層及び岩石の層序については, 平成9年度の調査結果に従った。また, 火砕流堆積物等のテフラ層については, 火山灰分析(ガラス・鉱物の組成分析及び屈折率測定)を実施した。テフラ試料の採取位置を図4−3に, 分析結果を図4−4に示す。

これらの結果に基づき, 断層と堆積物との関係が確認可能な地点を本年度の調査候補地点として, 高尾野町内木場地点, 高尾野町内木場東地点, 出水市栗毛野地点, 同市宇都野々地点, 同市君名川地点等を選出して(図4−2), 各調査候補地点について, 地形断面図, ルート・マップの作成等を行った。

これらの調査候補地点のうち, 第一段階の調査として,内木場地点でトレンチ調査を, 栗毛野地点及び宇都野々地点でボーリング調査を, また, 第二段階の調査として,内木場東地点及び君名川地点でボーリング調査及びトレンチ調査を実施した。内木場地点及び内木場東地点は内木場セグメントのほぼ中央部に,栗毛野地点は内木場セグメントの南端部に,宇都野々地点及び君名川地点は宇都野々セグメントにそれぞれ位置する(図4−2)。

各調査地点における調査結果は以下のとおりである。