(3)靜補正

静補正は、低速度の表層を第2層の速度で置き換え、震源点・受震点付近の局所的な表層の影響を取り除く処理である。この処理の目的は、

イ.表層の速度層厚は変化が激しいため、表層を通過する時間は震源・受震点により様々である。これをできるだけ一定にする。

ロ.表層と第2層との速度差は一般に大きいため、解析上仮定している直線波線から大きく外れる。これを補償する。

ハ.震源・受震点の標高差による影響を除去する。

等である。実際には次の3段階の補正を実施した。

a.表層静補正    

一般的には屈折法により表層をはぎ取る方法が用いられるが、特に、ミラ−ジ的な速度変化を示すような速度構造地盤では、必ずしも精度の高い補正値を得られるとは限らない。今回は、「屈折波を用いたトモグラフィ−」により静補正値を算出し、表層に起因する乱れを補正した。この処理の手順は次の通りである。図2−4−14図2−4−15に長尾および香南測線の解析の結果を示す。

イ.観測波形よりP波の初動走時を読み取る。

ロ.差分格子点に適当な初期速度分布値を与える。

ハ.アイコナ−ル法により、ある震源点で起震した場合の各格子点の初動走時を計算する。

ニ.初動走時分布をもとに波線を求める。

ホ.各波線の観測走時と計算走時の比を修正係数とし、波線周辺の格子点に記憶する。

ヘ.ハ.〜ホ.を全震源点についておこなう。

ト.格子に配られた修正係数をもとに新たな速度分布を算出する。

チ.ハ.〜ト.を収束するまで繰り返す。

b.残留靜補正

NMO補正後に、最大値を6msecに制限した自動残留靜補正解析を行った。

図2−4−14 屈折波トモグラフィーにより求めた表層部P波速度(長尾測線)

図2−4−15 屈折波トモグラフィーにより求めた表層部P波速度(香南測線)

c.CMPアンサンブル内での標高靜補正

NMO補正前に、各アンサンブルごとにその平均標高までの標高差補正を行った。なお、補正速度は1800m/secを用いた。

d.重合後標高補正

マイグレ−ション、深度変換後に各CMPの平均から基準標高(EL.150m)までの標高補正を行った。また、時間断面図のプロットの際も、地表平均標高(floating datum)から基準標高までを、1800m/secの速度を仮定して、標高補正を実施した。