9−2−3 花巻断層帯・北上西断層帯の総合評価

花巻断層帯・北上西断層帯について、平成7年度以降にトレンチ調査・詳細な地形断面測量・年代測定を実施した。現段階で、これまでの調査結果をもとに両断層帯を評価すると以下の通りである。

花巻断層帯・北上西断層帯について、トレンチ調査・詳細な地形断面測量・年代測定を実施した。現段階までの調査結果をもとに両断層帯を評価すると、以下の通りである。

(1) 変位地形は矢巾町和山付近から花巻市横森山付近まで約37kmの連続性が認められ、少なくともこの区間が一連の起震断層と考えられる。以降、これを花巻断層帯と呼ぶ。

(2) 平成7年度に北湯口トレンチにおいて確認された最新の地震は、約4,000年前、一つ前の地震の発生時期は7,300〜2,600年前に発生したと考えられる。松林寺トレンチにおいては最新の活動は8,000〜30,000年前に生じたと推定される。これらのトレンチ調査および反射法地震探査結果を勘案すると花巻断層帯の地表下浅部に認められる断層は各活動ごとに、何条かに分岐した可能性がある。

(3) 北湯口トレンチにおける単位ネットスリップは4mであり、単位鉛直変位量は2mである。

(4) 10〜12m の変位を受けているL1段丘の形成年代は約2.7万年前と推定される。

(5) 北湯口トレンチにおいて確認された2回の活動が、花巻断層帯におけるすべてであると仮定すると、単位鉛直変位量は5m、一部であるとすると2m以上である。

(6) これらの結果から、L段丘は2〜6回の断層変位を受けたと考えられ、花巻断層帯の地震の平均活動間隔は3,800〜23,000年と推定される。

(7) 1717年に発生した「花巻の地震」等が花巻断層帯の活動に起因するものである可能性があるが、不確実であり、4,000年前以降断層活動があったかどうか、またあったとしてもその時期は不明である。

(8) 花巻断層帯から発生する地震規模は、単位変位量(鉛直)=2m、断層の傾斜角=45゜、断層面下端の深度=15km、断層長=37kmとすると、モーメントマグニチュードMw=7.3 程度と計算される。        

(9) 単位変位量(鉛直)=5mとすると、断層長が大きくなり出店断層帯も花巻断層帯と同時に活動したことになる。しかし、出店断層帯の調査結果で同断層帯の単位変位量(鉛直)は2mとなっており、花巻断層帯と出店断層帯とが同一セグメントである可能性は低い。したがって、花巻断層地の鉛直変位量が5mであるという可能性は低い。