8 出店断層帯一次調査の総合解析

出店断層は村田(1939)が胆沢扇状地において「出店撓曲」と呼び、Fujiwara(1959)のChusonji fault、中川ほか(1963)の胆沢−油島撓曲線と呼ばれていた。渡辺(1990)は断層詳細図を作成した。活断層研究会(1991)は出店断層とし、確実度I、活動度B級、長さ4km と記載している。活断層研究会(1991)によると 9出店断層はさらに南北両方へ延びる可能性がある。南側はSWに走向を変えて胆沢町駒篭付近に至る。また、北側も活断層研究会(1991)による 12 天狗森断層、7 橇引沢西(断層)、11瀬峰断層に連続する可能性がある(図8−1)。

地形地質調査でも出店断層は胆沢川扇状地を横切る撓曲崖〜断層崖として認められ、北方延長は 12 天狗森断層、7 橇引沢西、11瀬峰断層に連続する可能性が高いと判断される。さらに活断層研究会(1991)による 3法量野−浦沢(断層)に連続する可能性も否定できない。出店断層帯の長さは24km程度となりそうである。また、地形面の年代と変位量からみて、出店断層の平均変位量は0.1m/1000 年程度と見積もることができる。

今回は出店断層帯の一次調査として文献調査、地形・地質調査、ボーリング調査(20m) を実施し、トレンチ調査の候補地点を選定した。トレンチ調査の候補地点はA:金ケ崎町野崎、 B:金ケ崎町天狗森、 C:金ケ崎町橇引沢、 D:金ケ崎町千貫石の4 箇所である(図8−2)。 これらの地点のうち野崎地点は金ケ崎町野崎にあり、永沢川の左岸側に発達するLU段丘と右岸側に分布する丘陵地からなる。丘陵地は鮮新世の油島層からなり、段丘は厚さ5m前後の砂礫層からなる。左岸側のLU段丘面の上には比高約3mの緩斜面があり、断層崖あるいは撓曲崖と考えられる。この断層崖の南延長は丘陵地内へ追跡され、鞍部と丘陵の高度不連続が認められる。断層推定位置付近には礫岩・砂岩・泥岩の互層が分布し、東側では緩傾斜を示すが西側にはいると急傾斜を示す。そして、断層推定位置付近から離れると再び緩傾斜になる。断層露頭は確認できなかったが、B−1 ボーリングでは深度6.0mで上盤側の凝灰岩と下盤側の砂礫が接する断層面が確認された。