2−5−2 北湯口測線

北湯口測線における反射面層序区分は上位からA層,B層となる。A層は細かい互層をなし,P波速度推定値は1400〜2300m/secである。B層は明瞭な反射面がみられず,P波速度推定値は2300m/sec以上である。A層とB層との境界は標高−90〜−120m付近にあり,両層の特徴が著しく異なることから,この境界は不整合面と解釈される。A層は志波層およびそれ以降の堆積物に対比される可能性が高い。

本測線では測線西端の約50m西方に山地と丘陵との境界が位置し,そこの地表には志波層と猪去沢層とを境する逆断層が存在する。本測線はこの逆断層の下盤側に位置し,A層の緩い褶曲構造が表現されている。標高−120から−90mにかけてA層基底と解釈される明瞭な反射面があり,東方へ高度を上げる。地表付近では5条の断層群が認められ,平野側から順にF1〜F5と仮称する。

平成7年度に北湯口トレンチで確認された断層はF4(CMP番号150)に相当する。この断層面は約20°西傾斜で標高60m付近まで連続し,それ以深では緩傾斜となりA層の層理面に収斂するように見え,F4は層面断層とみなされる。平成7年度の地形地質踏査結果によって,北湯口トレンチの断層がすべてのイベントを表わしていないという結論を考慮すると,この断層は地下深部の断層運動を反映した断層のひとつと解釈される。F4と対をなしてCMP番号235には東傾斜の断層であるF5がみられ,F4とともにテクトニックバルジを形成している。この構造は変位地形と良く対応している。F4の東側にはF4と平行するF3がみられるが,F4に比べ変形は顕著でない。さらに,F4,F5のテクトニックバルジの前面(東側)にはF1とF2が対をなして構成する同様のバルジが認められるが,地形には表現されていない。F1の鉛直変位量は数mで,現在の地形に表現されていない。これは変位量が十分に累積していない,あるいは人為的に地形が改変されたためと思われる。いずれにせよ,これら地表部の断層は標高60m以深に連続しない。標高60m以深では逆に東傾斜の明瞭な不連続線(F6)が認められる。不連続線(F6)はA層の背斜部と向斜部との境界付近に位置し,地層の傾斜変換点を連ねたものである。

以上のように,北湯口トレンチで確認された断層(F4)は約20°西傾斜で標高60m付近まで連続するが,それ以深では緩傾斜となりA層の層理面に収斂するように見える。この断層は地下深部の断層運動を反映した断層のひとつと解釈される。このF4の東側にはさらに同様の断層(F1〜F3)が数条認められる。