3−4−3 地形地質の記載

花巻市柴林から関上場にかけては、E−W〜ENE−WSW走向の直線的な低断層崖が続く。柴林ではLV段丘を3m以上変位させる断層露頭が認められた(Loc.Ym119)。高村山荘裏では、LV段丘を変位させる断層露頭が認められる(Loc.N420)。ふたつの露頭の断層面の傾斜はともに85°S,84°Nと高角度であり、走向と考えあわせて右横ずれ成分の卓越した断層と考えられる。Loc.N420では断層を挟んで両側で段丘礫層の基底には10m〜15mの高度差が認められるが、この付近のLT段丘堆積物基底には同程度の起伏をもつ埋没谷があり、さらに横ずれ量も検出不能で正確な変位量は決められない。

花巻市関上場の寒沢川左岸では、LT段丘が撓曲を伴いながら10mの鉛直変位を示し、右岸ではLU段丘が4mの鉛直変位を示す。

横森山では尻平川に沿って分布するHV段丘とM段丘とが比高50〜100m前後のバルジを作り、平野側へ大きく撓曲している。低下側にはLT段丘が広がりHV,M段丘は残存しないので下盤側の高度が不明であるが、少なくともHV段丘とM段丘とは、それぞれ>48m,>35mの鉛直変位を示す。また、LU段丘も幅 500mの撓曲を示し、その鉛直変位量は12mである。LT段丘は最終氷河期前半の段丘を考えられ、4万年前程度と推定される。積極的根拠はないが、M段丘はStage6、HV段丘はStage8と推定され、それぞれ15万年前、21〜23万年前と考える。段丘堆積物の基盤をなす更新世前期の岩崎新田層(大石ほか、1996)もテクトニックバルジと対応して背斜構造をなしており、ここでは変位量の累積が典型的に認められる。

尻平川以南では変位地形は不明瞭となり、直線性が良くない山麓線が約5km続いて和賀川に至る。和賀川以南では再び山麓線に沿って、段丘面の撓曲を含めて明瞭な変位地形が連続する。北上市萓刈場ではM段丘を変位させる低断層崖が明瞭に認められる。その前面約1kmの新夏油にはLU段丘を変位させる低断層崖も認められる。