3−7−5 詳細調査位置の選定

平成8年度の地形判読調査や,今年度行った地表地質踏査,地形測量の結果,卯辰山層や大桑層は北部から連続して撓曲している状況が把握されたものの,坂尻地区より南部に分布する医王山累層にはその傾向が認められないことが明らかになった.また,坂尻地区から南南西方向の扇状地面上に撓曲崖状の地形が連続し,南南東方向には低崖や撓曲崖状の地形がみられないという状況がより詳細に把握できた.

これらのことから,新編「日本の活断層」に記載されているように,富樫断層が地形境界に沿って南南西から南南東に走向を変えているということは,地質学的,地形学的にやや説明が困難となり,富樫断層が坂尻地区付近を南端としている可能性が考えられるようになってきた.

このため,坂尻地区にみられる変位地形を詳細に調査することにより,富樫断層南部の活動状況が把握できるものと考えられる.変位地形のうち,坂尻団地内やその南に隣接する農地の崖状地形は,現況では米軍写真で観察されたものより全体的にやや南側にずれており,宅地開発や圃場整備等で大規模な人工改変の影響を受けている可能性がある.このため,米軍写真撮影時点以降,人工改変を受けていないと考えられる地形を再度点検したところ,坂尻集落北端の農地にみられる崖が,南南西方向に連続する撓曲崖と一連で,人工改変を受けていない可能性が高いと判断されたことから,ここでトレンチ調査を実施することとした(図3−7−12).

図3−7−12 坂尻地区詳細調査位置図