(1)文献による記載

「日本の地質5中部地方U」や「土地分類基本調査(鶴来図幅)」によると,鶴来町坂尻町地区周辺には,下位から医王山類層(PY),砂子坂互層(alt),七曲凝灰岩層(tf),朝ヶ屋泥岩層(ms),下荒屋凝灰岩層(tf),大桑層(ss),卯辰山層(smg),高位砂礫層(gs),段丘礫層(tsg),新期扇状地堆積物(g),沖積層(a)が分布しているとされている(図3−7−2図3−7−3).

医王山類層(PY)は,主に流紋岩〜デイサイト質の火砕岩類からなり,一部に溶結凝灰岩や溶岩を伴う.K−Ar年代は約14Ma,フィッショントラック年代は約15〜16Maである.

砂子坂互層(alt)は,主に暗灰色の凝灰質砂岩と凝灰質泥岩の互層からなり,しばしば凝灰岩・凝灰角礫岩を挟む.上部に貝類化石が多く,大型有孔虫化石やウニ類の化石なども知られている.医王山累層を整合に覆う.層厚200m以下.

七曲凝灰岩層(tf)は,主に凝灰質砂岩,凝灰質泥岩,軽石質凝灰岩と白色で細粒の凝灰岩の互層からなり,最上部は玄武岩質で集塊岩状の溶岩である.砂子坂互層に漸移的に重なる.最大層厚約100m.

朝ヶ屋泥岩層(ms)は,七曲凝灰岩層分布域の北側に分布する,主に均質で塊状の泥岩,シルト質泥岩からなる.七曲凝灰岩層を整合に覆う.最大層厚約150m.

下荒屋凝灰岩層(tf)は,朝ヶ屋泥岩層分布域の北側に帯状に分布する,主に安山岩質の凝灰角礫岩,軽石質凝灰岩からなり,凝灰質砂岩,シルト岩を伴う.朝ヶ屋泥岩層を整合に覆う.最大層厚約60m.

大桑層(ss)は,浅海性の均質な砂岩からなり,下部は青灰色で固結度が悪いが,保存の良い貝類化石を多く含み,上部は黄褐色である.最大層厚約250m.

卯辰山層(smg)は,礫層を多く挟む砂礫層からなる.全体としては北西へ緩く傾斜するが,丘陵北西端では急傾斜し,森本・富樫急傾斜帯とよばれる.大桑層を一部整合,一部不整合に覆う.層厚約150m.

高位砂礫層(gs)は,下部礫層,上部泥層に分けられる.卯辰山では卯辰山層の上位にかさなる.層厚約15m.下部礫層はくさり礫を含む中〜巨礫の円礫からなる.上部泥層は,主に暗灰色の粘土からなり,砂・シルトを挟む.

段丘礫層(tsg)は小河川に沿った地区や丘陵地と平野の境界に分布しており,主に礫層からなる.層厚数〜10m.

地質構造については,丘陵・山地の大部分を構成する中新統の火砕岩類および火山岩類は,全体として北または北西側に向かって10〜20°の傾斜を示している.ただし,単純な単斜構造ではなく,部分的に南傾斜を示す部分があり,ゆるい波曲構造をなしているものと考えられる.北東端部の富樫山地に分布する中新〜更新統の堆積岩類は,一般に10〜30°の北傾斜を示すが,富樫山地の西縁部では,山地縁に平行なNNE−SSWの走向を示し,傾斜は50°以上,時に80°を超える急傾斜を呈している.

図3−7−2 表層地質図(土地分類基本調査(鶴来図幅),1/50,000)

図3−7−3 調査地域周辺の地質層序