3−5−6 梅田地区の調査結果

今年度の調査では,遺跡発掘調査で撓曲崖状の地形が見出された地点で,少なくとも約34,500年前の地層を切る逆断層が見出された.このことは,見出された断層が間違いなく活断層であることを意味している.また,トレンチ壁面では丘陵側隆起を示す複数の断層が確認されており,上盤側と下盤側で地層がほとんど対応しないことから,累積鉛直変位量は2.5m以上,すべり量は8m以上あるものと推定され,複数のイベントを確認した可能性が高い.これらのことから,森本断層の主断層にあたる部分の少なくとも一部が確認できたことは間違いないと言える.

また,発見された断層中には,トレンチ底まで連続的に有機質のシルトや木片が多量に狭在されていたが,年代測定の結果50,000年以上前の木片が含まれていることが明らかになったことから,この層は下位の層から引きずり上げられてきたものであると考えられる.

上盤側の地層の一部は,下盤側の地層中に擬礫状に点在している.また,断層面付近では,上盤側の地層が折れ曲がるようにして取り込まれている.これらの観察結果は,断層変位による地盤の上昇,崩壊を意味しているものと考えられる.この層を挟む上下の層の14C年代は6,430±60および6,140±40であることから,断層変位がこの期間内に生じた可能性が高い.

また,断層は,6,050±40Y.B.P.の木片を含む砂層に不整合に覆われていることから,それ以後に活動を行っている可能性は小さいが,木片は2次堆積である可能性も否定しきれないことから,このトレンチでの最終活動時期は確定できない.