3−5−5 年代測定の結果

トレンチ壁面を観察した結果,多くの層に炭質物が含まれていることが明らかになった.トレンチ壁面の地質学的な観察だけでは地層の対比が困難であったことから,可能な限り多くの層で年代測定を行った(表3−5−2).

表3−5−2 梅田地区の14C年代測定結果

年代測定の結果は以下のようにまとめられる.

@埋蔵文化財の調査で「弥生・古墳時代の遺物包含層」としていた「v層」の年代は

1,770±60Y.B.P.(w層:S'1)であり,調査結果は整合的である.

A「i層」から「s層」までの間では,下位から順に6,430±60(i層:S5),6,140±40(n層:N9),34,550±400〜32,250± 560(p層:N11・S1),6,050±40Y.B.P.(s層:S9)という測定値が得られた.この結果からは,34,550±400〜32,250± 560Y.B.Pという値以外は矛盾がなく,この間の地層は約6,500〜6,000年前の期間に形成されたものであると考えられる.

B34,550±400〜32,250± 560Y.B.P.(p層:N11・S1)の年代が得られたのは流木層で,層厚50cm程度と厚く,連続性もよい.現地で見た限りではサンプルを採取した部分だけが古い層から洗い出されて2次堆積したものであるとは考えにくい.この層の形成史については不明点が多く,断層活動や堆積環境など多方面からの議論が必要である.なお,この層の形成史を議論するにはデータ量,類似事例が少ないことから,詳細な検討については今後の課題とする.

C「g層」は「i層」より下位にあるが,2,580±40Y.B.P.(g層:N8)という値となった.サンプルは「g層」中にごくわずかにみられるもので,炭化した根であったことから,「g層」やその上位の層の形成後かなりの時間が経ってから根が混入し,この結果上位の層と矛盾した年代測定値となった可能性がある.

D「e層」から得たサンプルは根の痕跡から得たものであることから,純粋な地層の形成年代を示しているとは言い切れない.

E「ab断層面」に含まれる腐植土層の年代測定値は,上部の方から順に>37,330(S4),>49,950(S7),41,780±1,300(N2)という結果となった.このことから,この層は4万年前程度ないしそれ以前に形成された腐植土層が引きずり上げられてきたものと考えられる.