4−7−1 継続調査の対象地域

2年度にわたる調査では、森本断層についてはある程度その性状が解明されたものの、富樫断層については存在が推定される以外、ほとんど解明できていないのが実状である。そこで、継続調査では、富樫断層の性状解明について全力を挙げるのが急務であるといえる。

富樫断層は、金沢市窪地区付近から丘陵・低地の地形境界に沿って南南西方向に延び、鶴来町坂尻地区付近からは走向を南南東方向に変えて鶴来町の中心市街付近まで延びる断層とされている(活断層研究会,1991)。坂尻地区より北側の地域では、森本断層が分布する地域と同様に卯辰山層や大桑層が分布しており、これらが西に向かって大きく傾斜もしくは逆転していることが知られている。しかし、坂尻以南の地域では、断層の存在は推定されるものの地質が大きく異なっていることから、その分布範囲や活動状況はほとんど解明されていない。

平成8年度に行った地形判読調査では、金沢市額谷地区、四十万地区や鶴来町坂尻地区など、卯辰山層・大桑層が分布する地域には地形境界に沿って低断層崖や撓曲崖状の地形が断続的に見られることが確認された。これらの地形はすべて北北東−南南西方向の走向となっており、鶴来町坂尻地区では山麓線から離れ、日御子地区付近の低地内まで分布している。また、坂尻地区から鶴来町市街にかけての地域にはこれらと同様な地形は認められなかった。平成9年度調査では、金沢市四十万地区で地表地質踏査(精査)・極浅層部反射法弾性波探査・ボーリング調査・トレンチ調査を行った。その結果、トレンチ調査によって液状化と考えられる痕跡が発見され、約9千年前から3万年前の間の期間に調査地付近に大きな揺れをもたらした地震が発生したことが明らかとなった。

これらの情報から、富樫断層が最近に活動した可能性と従来坂尻地区で走向を変えるとされてきた富樫断層が走向を変えずに手取川扇状地の地下に埋没しているか、坂尻地区付近が末端となっている可能性が推定されるようになってきた。手取川扇状地の扇央に変位地形が認められないのは、その地点での富樫断層の累積変位量が手取川の浸食量を上回らない程度に小さいか、断層の動く範囲が坂尻地区付近で切れている可能性が考えられる。したがって、金沢市窪地区〜鶴来町坂尻地区での断層活動を確認することによって、森本・富樫断層帯の活動から予測される地震の規模が特定できることが期待される。

富樫断層について継続調査を行う場合、四十万地区より北側は住宅地が大半であることから用地的に調査は難しく、南側でも金沢市内ではほぼ宅地化が進んでおり、大規模な調査を行うことは困難である。調査用地が確保できる見込みがあるのは、鶴来町坂尻町以南の地区である。

以上のことから、富樫断層の活動履歴を把握するためには、断層である疑いの強い地形が残されている鶴来町坂尻町付近で継続調査を行うことが最善と考えられる。具体的な調査法としては、調査地域の地質状況を把握する目的で地表地質踏査(精査)、ごく最近の地層のずれを把握する目的で変位地形を挟むボーリング調査、断層を直接確認する目的で変位地形にあたる部分でのトレンチ調査を行うことを提言する。