(6)地質構造の解釈

地質踏査結果やボーリングデータ等を加味して、マイグレーション深度断面図に地質構造の解釈を行った(図3−4−14)。なお、深度断面図は水平方向:垂直方向=1:1で表示されており、縮尺は1/1,250である。また、図の深度は解析上の架空の基準面からの深度となっており、起点付近では実際の地表面から30m程度上空に設定されている。解釈図から、以下の事項が読みとれる。

@この図では深度−250m付近までの断面が示されている。深度断面図には、基本的には測線全域にわたって西側に緩く傾く地質構造が示されているが、所々に反射面の連続しない箇所が現れている。

A測点60m付近の地下では、相対的に終点側(丘陵側)が上昇を示す反射面の不連続部分が35°程度の東傾斜で地下深部まで連続しており、断層(F1)の存在が推定される。深度−80〜−150m付近では、F1より東側の反射面が系統的に傾斜しているように見え、深い位置にある反射面ほど傾斜が大きいように見える。F1は地表からの深さが10m程度のところまで追跡できるが、それより上部では不明瞭になる。なお、地表面では測点60m付近に地形的な段差は認められない。

B測点100m付近では、終点側の反射面が相対的に5m程度上昇している部分が系統的に見られることから、断層(F2)の存在が推定される。F2は60°程度の東傾斜で延びており、深度−110m程度の位置でF1とつながっていると推定される。F2は地表からの深さが数mのところまで追跡できるが、それより上部は不明である。なお、地表面では測点100m付近に地形的な段差は認められない。

CF1とF2に挟まれる範囲の深度断面を見ると、反射面が不明瞭な部分があることから、断層の活動に伴って地層が攪乱されている可能性が考えられる。

D測点140〜200m付近の地下には反射面の不連続部分が複数認められ、いずれも系統的に終点側が数m上昇していることから、断層(F3・F4・F5)の存在が推定される。F3は45°、F4・F5は50°程度の東傾斜で、深部では接近しているように見える。F3については深度−70mから上部でさらに枝分かれしていると推定され、測点140〜170m付近では地下数mのところまで反射面の連続性が悪くなっている。F4は地表からの深さが10m程度のところまで追跡できるが、それより上部は不明である。F5は地表からの深さが数mのところまで追跡でき、F5より終点側の深度−30〜60mの間では反射面が不明瞭になっている。なお、この付近の地表では地形的に明瞭な段差は認められない。

E測点200〜320mの区間では、地表から10m程度の深さの反射面が連続的であり、深度−90m程度に見られる反射面も連続していることから、断層が存在するとは推定しにくい。なお、測点252m地点で実施したボーリング(B9−1:掘削深度50m)では、地表〜−5.2m:シルト・粘土、−5.2〜−23.5m:玉石混じり砂礫、−23.5〜−25.4:中〜粗砂、−25.4〜−26.1m:粘土、−26.1〜−50.0m:玉石混じり砂礫、という結果が得られている。また、地形判読調査では、測点200〜250m付近にかけて若干傾斜が急になっていることが確認されている。

F測点320m付近では、地表付近の反射面はほぼ連続的であるが、深度−40m付近から深部には反射面の不連続部分が認められ、断層(F6)の存在が推定される。地表から20m程度の深さまでの反射面には不連続部分が認められないことから、F6は比較的活動時期が古い断層と考えられる。

G測点340〜360m付近では、地表付近から反射面が不明瞭な部分が認められ、これらの両端の反射面が明瞭な部分との境界に断層(F7・F8)を推定した。F7・F8に挟まれる部分では反射面が不明瞭であることから、断層活動により地層が攪乱されていることが考えられる。なお、F7・F8付近は低地と丘陵の地形境界となっている。

図3−4−14 地質構造解釈図