(4)地質構造

調査地域に分布する第三紀および第四紀更新世中期(卯辰山層)以前の地層の地質構造は、大局的にはNE−SW走向を主体とし、西に向かって50〜80゜程度の高角度で傾斜している。第四紀更新世中期(高位砂礫層)以降の地層が分布する地域では緩斜面が形成されていることが多く、堆積物は10°程度西に傾く地質構造を示す。

以下、各地層ごとに記述する。

@大桑層の地質構造

本層は、大局的にはNNE−SSW〜NE−SW走向を示す。傾斜は50〜90°である。調査範囲内では、地層の走向については大きな変化はないが、傾斜は地域ごとに大きく異なる。

踏査地域北部では、走向はNNE−SSWでほぼ一定しており、80〜90°で西に傾斜している(図 3−4−5−3の9)。

踏査地域中央部では、走向はNNE−SSW〜NE−SWを示している。採土場から南に延びる谷では2ヶ所で東に77〜78°で傾斜(逆転)しているが、その南方100m付近では50°で西に傾斜しているなど、傾斜の変化が著しい。

踏査地域南部では、走向はNNE−SSWでほぼ一定しており、50〜60゜で西に傾斜している。

A卯辰山層の地質構造

本層の地質構造は地域によって大きく異なっている。以下に各地域ごとに記述する。

踏査地域北部の採土場付近では、走向はNNE−SSW〜NE−SWを示し、西に傾斜している。採土場北端では卯辰山層が直立している露頭も見られるが、南端では概ね西へ70°で傾斜している(図3−4−5−2の5)。さらに、卯辰山層の上部にあたる部分では西傾斜約40°となっているところもあり、傾斜の変化は著しい。

踏査地域中央部では、走向はNE−SWを示し、40〜50゜Eで地層が逆転しており、踏査範囲内で最大の傾斜角度を示している(図3−4−5−2の7)。走向・傾斜が測れないところでも、礫の配列から明らかに逆転している露頭も見られる。

踏査範囲南部では、走向はNNE−SSW〜NE−NWを示し、西に50〜90°で傾斜している。

B高位砂礫層の地質構造

本層は、軽石の挟まれる露頭では走向・傾斜を正確に測定することはできなかったが、礫の配列等から西向きに10〜20°程度の緩い傾斜をしていると推定される。金沢村田製作所東方では、走向がN8°Eで東に18°傾斜している。

C中位段丘堆積物・低位段丘堆積物の地質構造

中位段丘堆積物および低位段丘堆積物の地質構造は、西側に緩く傾斜している。中位段丘堆積物は1地点でシルト層の走向・傾斜が測定でき、その結果ではN30°E,10°Wである。礫の配列からはいずれの露頭でも同程度の傾斜があるものと推定されるが、詳細な測定結果は得られなかった。

これらの調査結果から、踏査地域における大桑層・卯辰山層の地質構造は、丘陵から平野に沈み込むような撓曲構造を形成しているものと推定される。全体的な傾向としては、踏査地域北部で急角度の傾斜〜直立となっており、中央部では大桑層および卯辰山層下部が完全に逆転している。また、南部では垂直ないし高角度で傾斜している。

大桑層・卯辰山層を不整合に切る高位砂礫層、中位段丘礫層は、大桑層・卯辰山層に比べてかなり緩やかに西に傾斜している。低位段丘堆積物に関する情報は得られなかった。

以上をまとめると、大桑層と卯辰山層に大きな走向・傾斜の違いは見られない。高位砂礫層と卯辰山層の傾斜角度に大きな差があることから、踏査地域における地殻変動は高位砂礫層堆積以前から始まっており、地形面の傾斜から、少なくとも中位段丘形成時期までは継続していたことが推定される。