(4)ボーリング調査・簡易ボーリング調査の結果

今年度および平成8年度のボーリング調査・簡易ボーリング調査によって得られた地質データや既存資料から、調査区間の推定地質断面図を作成した(図3−2−4図3−2−5)。これらの図から、調査区間の地質について以下のようなことが推定される。

@今年度調査を実施したB−6〜G−1の区間には、標高1〜2mに分布する小礫含有層の下位に層厚3〜6mを有する砂質土が分布している。この層は上位層に比べ締まった状態で、挟在する腐植質含有層はほぼ水平を示している。また14C年代測定の結果では、この層は約50,000年前以前に形成された可能性が高いことから、卯辰山層より新しい洪積層(本報告では「新期洪積層」としている)で卯辰山層を不整合に覆ってほぼ水平に分布していると推定される。

A新期洪積層より下位に分布する洪積層(砂層及び泥岩層)は所々固結状を示し、約45゜の傾斜を示す層理面もしくは脈状の帯が確認できる。このことから、これらの洪積層は卯辰山層であると推定される。

BB−3からB−6間の卯辰山層上面のレベルは標高0〜−7mに存在する。この上面はB−1〜B−3間では階段状に海側へ低下しているが、B−1付近より海側では逆に約5m上昇している。またG−7〜B−6間においてボーリングと簡易ボーリングを密に行った結果、卯辰山層上面には約4mの起伏が認められた。

これらのことから、卯辰山層上面の形状は多少の起伏が認められるが、全体として平坦な形態を有しており、起伏は河川または海の浸食によって形成された可能性があると考えられる。

C今年度および平成8年度の調査区間(B−6〜B−4)のうち、G−5〜G−1間では新期洪積層中の腐植質含有層上面、B−6〜G−1間では小礫含有層、G−1〜B−5間では風化泥岩礫含有層がいずれも水平もしくはほぼ一定の非常にゆるい傾斜で連続している。B−5〜B−4間ではこれらの層に垂直方向のズレが認められ、平成8年度調査で行ったT−2トレンチでは約2,000年前に形成された断層が確認された。また、風化泥岩礫含有層はT−2トレンチでは確認されていないことから、T−2トレンチ地点における沖積層基底(約5,000年前に形成)より下位の層準に相当すると考えられる。

これらのことから、腐植土層上面、小礫含有層、風化泥岩礫含有層は調査区間における有効なKEY BETと考えられるが、これらの層の分布状況から、B−6〜G−1間では近年(50,000年前以降の可能性が高いが、少なくとも7,000年前以降)に生じた大きな変位は認められないといえる。また、G−1〜B−5間では5,000年前以降に生じた大きな変位は認められない。

図3−2−4 地質推定断面図(梅田地区全体図)

図3−2−5 地質推定断面図(平成9年度調査詳細図)

DG−4〜G−6間の標高−5〜−13mには、洪積層の下位に暗灰色を呈し腐植物を含有する、見かけ上沖積層と酷似した砂層が存在しているが、14C年代測定の結果、この層は約50,000年前以前に形成された地層であることが明らかになった。また、同区間では、この層は層位的に西傾斜約40゜で連続していることから、この砂層も卯辰山層を構成する一部と考えられる。

EB−1〜B−7間における卯辰山層は上位より半固結腐植土層、半固結シルト層、泥岩層、亜炭層、砂岩層の構成を示している。B−1とB−7におけるこれらの分布レベルをみると、上位より泥岩層までは調査地周辺の卯辰山層の一般的な傾斜である約40゜の傾斜で連続しているが、それより下位の亜炭層、砂岩層は水平もしくは逆傾斜を示している。

このことから、この区間には図3−2−5に示すような平野側が上昇する高角の断層(F1:逆断層またはF2:正断層)が存在する可能性が考えられる。しかし、いずれの断層にしても平野側隆起の副次的な断層であると推定され、活動時期は新期洪積層堆積以前で、50,000年前以前の可能性が高いと考えられる。

これらの結果から、ボーリング調査・簡易ボーリング調査によって明らかになった事項は以下のようにまとめられる。

平成8年度に行った極浅層部反射法弾性波探査やボーリング調査の結果では、反射法測線の40mから110mの区間にかけて、沖積層の基底面に数m程度の起伏があると推定された。しかし、今年度の調査において詳細な検討を行った結果、卯辰山層上面には数mの幅で起伏が認められるものの、沖積層基底面と考えられる小礫含有層やそれより上位の沖積層には大きな変位が認められず、少なくとも最近7,000年間にこの区間の地層を大きく変位させるような断層活動はなかったと推定される。少なくとも50,000年前以前に形成されていたと考えられる卯辰山層には断層の存在が推定されるが、平野側隆起の断層であることから森本断層の主断層である可能性は低く、活動時期は少なくとも50,000年前以前であると推定される。