3−5 森本断層の活動性に関する検討

地形地質調査によって、急傾斜地が帯状に分布する地域や地層の撓曲が著しい地域の分布状況を把握し、森本断層の位置・長さを推定した。急傾斜地は比較的新しい地形面と考えられる小規模な扇状地上にも認められた。このため、近年にも地表まで変位を及ぼす活動を行った可能性が考えられるようになった。

反射法弾性波探査(疋田−神谷内測線)においては卯辰山層基底面やそれより上位の層と考えられる反射面にズレが認められ、300m程度の幅に複数の伏在断層が推定された。極浅層部反射法弾性波探査(梅田測線)では、沖積層基底面も変位していると推定された。

トレンチ調査は、極浅層部反射法弾性波探査の測線沿いで、沖積層基底面に変位が推定され、しかもトレンチで掘削可能な範囲に変位が生じている可能性のある箇所で実施した。その結果、以下の事実が明らかになった。

・卯辰山層を切断する、平野側を上盤とする逆断層が発見された。この断層の垂直変位量は0.9〜1.0mで、水平変位は認められなかった。

・卯辰山層を不整合に覆う沖積層は撓曲構造を示しており、確認できる最上位の層の変位は80cm前後であった。このことから、発見された変位は1回の活動によるものと考えられる。

・トレンチで変形が確認された最上位の層は、14C年代測定結果によると1,950±70Y.B.P.(暦年代ではB.C.50年程度)の層である。それより上位の層は発掘調査や耕作によって乱されており、地層の変形から変位発生時期を特定することは困難である。

・トレンチで確認された変位を受けている沖積層のうち、最下位の層の14C年代は4,510±60Y.B.P.(暦年代ではB.C.3,050年程度)、最上位の層は1,950±70年Y.B.P.(同B.C.50年程度)という結果が得られた。

・梅田B遺跡の発掘調査では、古墳時代の溝の遺構(14C年代測定結果ではA.D.650年程度)に変位が認められず、弥生時代後期後半以降の溝の遺構(同A.D.90年程度)は低断層崖の下にしか見られないことが明らかになっている。このことから、変位は古墳時代より前に生じたことは確実で、弥生時代後期後半より前に生じていた可能性が考えられる。

以上の成果をもとに、森本断層について、最新活動時期・再来間隔・平均変位速度・単位変位量(1回の活動に伴う変位量)・想定マグニチュード・長期予測・今後の課題を検討した。