(5)地質構造の解釈

(1)反射面の考察

極浅層部反射法弾性波探査(梅田測線)によって得られた反射面の性質について、地質踏査データ、ボーリングデータ等を加味して考察した(図2−5−2−17)。

A:明瞭な反射面

黄緑色で示したのは、断面中で明瞭な反射面を示すものである。これらの反射面は探査起点から40m付近までの−35m以浅の範囲、160mから220mまでの表層付近、250mから290m付近までで−20m以浅の範囲、380mから終点までで−10m以浅の範囲などである。いずれも反射面もやや起伏はあるものの概ね水平方向に延びる傾向が認められる。

B:ボーリングデータによる沖積層基底面

赤い点で示したのはボーリング調査で得られている沖積層基底面を示したものである。Aで示した明瞭な反射面と一致しているものが多く、これらの反射面は沖積層内のものを示している可能性が強いと考えられる。

C:明瞭な反射面が見られない範囲

水色で示したのは明瞭な反射面がほとんど見られない範囲である。原因としては層内に反射面となる物性の違いがないこと、弾性波が到達していないこと、反射面となる層の連続がないことなどが考えられる。

D:急傾斜の反射面が認められる範囲

黄色で示したのは、比較的明瞭な反射面が途中で切れることなく45゜〜50゜程度の傾斜を保ちながら、起点側(西側)に向かってほぼ一様に傾斜している範囲である。これらの反射面はショット記録の段階から認められることから、ノイズである可能性は低い。また、測線周辺に見られる露頭では大桑層がほぼ同様の傾斜角・傾斜方向で分布していることが確認されていることから、大桑層もしくはその上位層にあたる卯辰山層内の反射面を示しているものと考えられる。

E:時間断面で得られた速度値が急激に変化する位置の反射面

緑色で示したのは時間断面で得られた速度値が急激に(1000m/s以上)早くなる位置にある反射面をつないだものである。速度値の急激な変化は物性値の違いを示している可能性がある。

F:反射面の屈曲

起点より200m付近の標高−150m〜200mの反射面には連続する反射面が屈曲しているように見える。

G:低周波ノイズの卓越する範囲

ピンク色の線で示したのは、ショット記録に低周波のノイズが卓越し、その他の区間と比較して屈折波の到達が遅かった範囲である。

H:トレンチ調査で確認された断層

紫の線で示したのはトレンチ調査によって確認された断層面で、N36〜38゜E/36〜40゜Wの走向傾斜をもち、平野側が相対的に上昇した逆断層である。

図2−5−2−17 極浅層部反射法弾性波探査の解析結果図

(2)地質構造の解釈

図2−5−2−17に示された内容を考慮に入れて、マイグレーション深度断面図に地質構造の解釈を行った(図2−5−2−18)。

図2−5−2−17のAは明瞭な反射面を示している。これらの反射面のうち最下位のものはボーリングデータによる沖積層の基底面とほぼ一致しており、連続する部分は沖積層の基底面からの反射を示しているものと考えられる。これらの形状から、沖積層の基底面は平坦ではなく、途中で切断・屈曲して凹凸が多く存在すると考えられる。沖積層と考えられる部分は水色で着色した。

この図では、標高−150mまでの断面が示されている。地下−70m付近より下部では、ほぼ西傾斜45〜50゜程度の反射面が連続しており、地表の露頭で確認できる大桑層、卯辰山層の傾斜と調和的であることから、これらの層理面が反射面となっていると考えられる。傾斜した反射面は深部では西から東に向かって傾斜が急になっていく傾向が見られる。ただし、測線終点付近の浅部ではやや傾斜が緩くなる。卯辰山層・大桑層の傾斜を示すと考えられる反射面は緑色で示した。

各段階の反射記録で得られた情報を総合すると、起点から50m付近の地下浅部には沖積層基底面の段差が数ヶ所で想定され、それと調和的な反射面の不連続帯が深度50m付近まで樹枝状に発達していると考えられる。それより深部では物性値の大きく異なる反射面の不連続部分や卯辰山層・大桑層の屈曲点がすべて上部の反射面の不連続帯と調和的な線上に位置することから、このラインに東傾斜約40゜の逆断層を推定した。推定される断層の上部は沖積層内と考えられる反射面まで変形させている。また起点より170m〜250mまでの間では、地下浅部(標高−10m以浅)に反射面の不連続が多く見られる。このうちの一つはトレンチ調査によって平野側が上昇している西傾斜の逆断層(垂直変位量約1m)であることが確認されていることから、その他の不連続面にも小断層が含まれている可能性がある。ただし、標高−20m以深の反射面が明瞭ではないため、地下深部への連続性の有無については明らかにできなかった。起点より290m付近の地下にも沖積層基底面に凹凸が見られ、標高−10m以下の反射面にも屈曲が見られることから、東傾斜約50゜の逆断層を想定した。

図2−5−2−18 地質構造解釈図