(2)極浅層部反射法弾性波探査

(1)目的

梅田地区では断層を跨ぐような方向で東部環状道路の建設に伴うボーリングが多数行われている。既存ボーリング柱状図から推定地質断面図を作成すると、反射法弾性波探査(疋田−神谷内測線)で得られた「断層は山麓線付近から数百m程度の範囲に複数分布している」という結果を裏付けるように、ある程度の幅の間に沖積層基底面の段差が認められる。これらの調査結果より、地下20m前後の地層面まで断層によって切られている可能性があると推定できることから、表層部50m程度の詳細な地質構造を明らかにする目的で極浅層部反射法探査を行った。

(2)測線位置および測線長

測線位置:金沢市梅田地内の農道

測線長 :420m(図1−2−4−4

(3)探査実施期間および測定時間

平成9年3月7日〜3月11日・夜間作業(午後9時〜午前6時)

(4)探査対象深度

深度50m程度まで

(5)探査仕様

本探査においては発震装置として重錘落下型震源装置を用いた。この震源は約50kgの重錘を油圧装置を用いて1mつり上げた後に、これを地面上に自由落下させることによって地震波を発生させるものである。受振器としては固有周波数100Hzのシングルジオフォンを用いた。また、データ収録装置としてはGeometric社製のStrataview R60を2台連結して用いた。本探査の仕様を以下に示す。また、使用機器を表1−2−4−2にまとめた。

図1−2−4−4 梅田地区の調査位置図

<極浅層部反射法弾性波探査仕様>

 震 源:ドロップヒッター(50kg) 受信点パターン:シングル(1点につき1個設置)

 受振器:L−40A(100Hz) 同時データ取得チャンネル数:最大120

 探鉱機:Strataview R60 ×2 水平重合数:37〜72

 受振点間隔:2m 垂直重合数:20回/点

 発震点間隔:2m

表1−2−4−2 使用機器一覧表

(6)測定データの処理

図1−2−4−5に解析処理のフローチャートを示す。

図1−2−4−5 極浅層部反射法弾性波探査解析フローチャート

(7)極浅層部反射法弾性波探査(梅田測線)の結果

極浅層部反射法弾性波探査によって得られた深度断面図について、解析段階で得られた情報を加味しながら地質構造の解釈を行い、地質構造解釈図を作成した(図1−2−4−6)。

標高5〜−20mには比較的明瞭な反射面が存在する。これらの反射面はボーリングデータによる沖積層の基底面の深度とほぼ一致しており、連続する部分は沖積層基底面からの反射を示しているものと考えられる。反射面の形状から、沖積層の基底面は平坦ではなく、途中で切断・屈曲して凹凸が多く存在するものと推定される。

この図では、標高−170mまでの断面が示されている。地下−70m付近より下部では、ほぼ西傾斜45〜50゜程度の反射面が連続しており、地表の露頭で確認できる大桑層、卯辰山層の傾斜と調和的であることから、これらの層理面が反射面となっていると考えられる。傾斜した反射面は深部では西から東に向かって傾斜が急になっていく傾向が見られる。ただし、測線終点付近の浅部ではやや傾斜が緩くなる。

各処理段階での反射記録から得られた情報を総合すると、起点から50m付近の地下浅部には沖積層基底面の段差が数ヶ所で想定され、それと調和的な反射面の不連続帯が深度50m付近まで樹枝状に発達していると推定される。それより深部では、物性値の大きく異なる反射面が不連続となる部分や、卯辰山層・大桑層の屈曲点がすべて上部の反射面の不連続帯と調和的な線上に位置することから、この線上に東傾斜約40゜の逆断層が存在すると推定される。逆断層の上部は沖積層内の反射面まで変形させている。また起点より170m〜250mまでの間では、地下浅部(標高−10m以浅)に反射面の不連続が多く見られる。これらの不連続面は小断層を示している可能性がある。ただし、標高−20m以深の反射面が明瞭ではないため、地下深部への連続性の有無については不明である。起点より290m付近の地下にも沖積層基底面に凹凸が見られ、標高−10m以下の反射面にも屈曲が見られることから、東傾斜約50゜の逆断層を推定した。

図1−2−4−6 地質構造解釈図