7−2 六甲山地周辺地域の活断層

兵庫県では平成13〜15年度にかけて,六甲山地以北地域に分布する活断層の性状を把握するため,六甲断層,淡河断層,柏尾谷断層,古々山断層などを対象として調査を実施してきた。

地震調査研究推進本部の有馬−高槻断層帯の評価(平成13年6月13日発表)によれば,これらの各断層は宝塚市付近以西の有馬−高槻断層帯の西部に属する。しかし,六甲・淡路島断層帯の北部においてはこれらの各断層帯が近接して並行することや,六甲・淡路島断層帯の北部への延長が有馬−高槻断層帯と接合する位置関係にあることなどより,兵庫県における一連の調査結果は,これらの断層帯の活動区間や連動性などを考察する上で有用な情報と考えられる。

これまでに兵庫県が実施して明らかとなった六甲山地周辺地域に分布する各断層の活動性をまとめると,表7−1のとおりである。

表7−1 兵庫県の調査による六甲山地周辺に分布する断層の活動性

この表に示されるように,六甲山地北部に分布する各断層のうち,最も活動的と判断される断層は六甲断層であり,その最新活動時期は1596年の慶長伏見地震に対応する可能性が得られた。六甲断層は,上述したように有馬−高槻断層帯の西部に属する断層であり,地震調査研究推進本部の評価は,主に宝塚市付近以東の同断層帯の東部における結果であったため,この調査により,慶長伏見地震における有馬−高槻断層帯の活動区間の西端は,宝塚市以西まで延長することが示された。

しかし,そのさらに西方への延長部に分布する淡河断層や柏尾谷断層などは,表7−1に示されるように,いずれも最近の地質時代における活動性は六甲断層に比較して低く,またその活動間隔も長いことが明らかとなった。

一方,兵庫県では平成7年度において,六甲山地東部の伊丹台地をほぼ東西に横断する昆陽池陥没帯を対象としてトレンチ調査を実施した。その結果,昆陽池陥没帯の北縁を形成する断層の最新活動時期を16〜18世紀と推定し,1596年の慶長伏見地震がそれに相当する可能性のあることを示唆した(兵庫県,1997)。昆陽池陥没帯は,地震調査研究推進本部によれば,六甲・淡路島断層帯主部に属する活断層とされ,この断層帯の北端部は野畑断層によって有馬−高槻断層帯と接合する位置関係となる。したがって,この昆陽池陥没帯における調査結果は,有馬−高槻断層帯と六甲・淡路島断層帯主部が連動して活動することを示唆する結果となる。

文部科学省に設置された地震調査研究推進本部は,これまでに行われた活断層調査やその他の研究成果をまとめて,日本全国に分布する主要な活断層の長期的な評価を実施してきている。六甲・淡路島断層帯の長期評価が平成17年1月12日に公表され,また,有馬−高槻断層帯の評価も平成13年6月13日(同年7月11日訂正)に発表されている。それらの評価結果をまとめて示すと,表7−2のとおりである。

表7−2 六甲・淡路島断層帯および有馬−高槻断層帯の評価結果

(地震調査研究推進本部ホームページ:http://www.jishin.go.jp/より)

有馬−高槻断層帯の活動性の評価は,上述したように,平成13年に公表されたものである。そのため,兵庫県によって実施された平成14年度における六甲断層の調査結果は考慮されていないが,表7−1に示したように,最新活動時期に関しては整合する結果が得られている。また,有馬−高槻断層帯の西方延長部に分布する淡河断層および柏尾谷断層については,最新活動時期はそれぞれ約40,000年前〜15,000年前と約40,000年前以前とかなり古く,また活動間隔も長いと推定されることより,その活動性は有馬−高槻断層帯とは異なるものと判断される。

一方,表7−2に示されるように,六甲・淡路島断層帯主部のうち,六甲山地南縁−淡路島東岸部の最新活動時期が16世紀と評価されている。しかし,先述した本調査結果によると,須磨断層の最新活動時期は600年前以前である結果が得られており,必ずしも整合する結果とはなっていない。今後における,より詳細な地質情報の集積が望まれる。