6−2−2 六甲断層

図6−4 六甲断層の調査位置図

西宮市船坂において行った調査の結果,第6トレンチでは,断層上盤側のW層とVb層が急傾斜し,W層がVb層に乗り上げていることが確認された。したがって,Vb層堆積以降の断層活動は確実であり,第6および第1トレンチでのVb層とW層との境界部の14C年代は,約740y.B.P〜約650y.B.Pを示すことから,その活動時期は約650y.B.P以降となる。なお,第1トレンチのVb層中には,約1260y.B.Pという14C年代が得られているが,この年代値は下位層の値と逆転しており,下位層の二次堆積物と考えられる。

第4トレンチでは,断層はTc層に変位を与えていないことが確認された。Tc層の14C年代値はばらつくが,再堆積による古い試料の混入が考えられ,最も新しい約250y.B.Pが,Tc層の形成年代を示していると考えられる。

以上より,六甲断層の最新活動時期は,約650y.B.P.(Cal AD 1270〜1420)以降,約250y.B.P.( Cal AD 1490〜1950)以前であり,この活動は西暦1596年の慶長伏見地震時の可能性が高い。

これより以前の活動は,いずれのトレンチにおいても,断層上盤側ではX層が欠如し,下位のY層をW層が直接覆っていることから,X層堆積以降,W層堆積以前に少なくとも1回以上あったことが確実である。X層中に阪手テフラ(約15,000年前〜16,000年前),W層中に鬼界アカホヤテフラ(K−Ah:約7,300年前)の降灰層準が認められるので,この活動時期は,約15,000年前以降,約7,300年前以前となる。

このように,最新活動時期に先行する活動時期が詳しく特定できないため,厳密な活動間隔は不明である。しかし,最新活動時期が西暦1596年である可能性が高いことより,六甲断層が有馬−高槻断層帯東部(平均活動間隔:1,000〜2,000年)と連動すると仮定した場合,その切迫度は高くないと判断される。

表6−1 船坂地区の地質層序

図6−5−1 船坂西第6トレンチ西側法面スケッチ図

図6−5−2 船坂西第1トレンチ東側法面スケッチ図

図6−5−3 船坂西第4トレンチ西側法面スケッチ図