6−1 概要

六甲・淡路島断層帯北部の断層は,活断層研究会編(1991)や岡田・東郷編(2000)によれば,@有馬−高槻断層帯から西方の六甲山地北側に延びる断層系と,A同断層帯から南西方に延びる六甲山地南東縁断層帯に大別される。

@の活断層は,六甲,名塩,山田−湯槽谷,古々山,柏尾谷,淡河断層など,有馬−高槻断層帯の西方延長に位置するほぼ東西性の断層である。これらのうち,確実度Tと推定され,第四紀後半も活動的と評価されている断層は,六甲断層のほか柏尾谷断層と名塩断層の一部区間のみである(中田ほか,1996;渡辺ほか,1996a;岡田・東郷編,2000)。

Aの活断層としては,清荒神,大月,五助橋,芦屋断層など,概ね北東−南西方向に延びる断層がある。清荒神と五助橋断層南西部は確実度Tであるが,その他は第四紀後半以降それほど活動的ではない可能性が高いと評価されている(岡田・東郷編,2000)。

この他,六甲山地北東縁を限る南北性の塩尾寺断層や小林リニアメントなどが分布しており,これらは断層の長さが2km程度と短く上下成分が卓越する逆断層とみなされることなどから,上記の活断層とは若干性格を異にする。

上記の特徴を有する六甲・淡路島断層帯北部における断層の基本的性状を把握し,平成14年度以降の調査地を選定することを目的として,平成13年度は地質文献調査,空中写真判読,地表地質踏査を実施した。

その結果,調査地域の東部に分布する六甲(桜が丘を含む),清荒神,塩尾寺,および小林のいずれの断層も,中位段丘面形成以降の活動があることがほぼ確実であると推定される。これらのうち六甲断層については,長さが10kmに達して右横ずれ地形も明瞭であり,完新世の沖積段丘面にも変位を与えている可能性が高い。

調査地域中部の有野,射場山,唐櫃,山田−湯槽谷,大月,および五助橋の各断層はいずれもリニアメントのランクが低く,新しい地質時代における活動を示唆する地形・地質データに乏しい。

調査地域西部に分布する淡河,柏尾谷,古々山の3断層については,新しい時代における活動の有無は不明であるが,本調査ではいずれもリニアメントのランクが高く,比較的系統的な右横ずれ地形が認められること,渡辺ほか(1996a)や岡田・東郷編(2000)などでは柏尾谷断層を活断層としていることから,新しい時代における活動があった可能性も考えられる。

以上の結果より,まず,六甲断層に関して最新活動時期などの活動履歴,とくに1596年の慶長伏見地震時における連動性などを明らかにする必要があると考えられ,平成14年度にボーリングおよびトレンチ調査を実施した。

塩尾寺断層,小林リニアメントについては,断層通過位置周辺の人工改変が著しく進行し,現在では人口密集地となっている。このように,トレンチ調査用地の確保が困難であるため,平成14年度に反射法地震探査およびボーリング調査を実施した。

淡河,柏尾谷,古々山断層については,従来活断層の可能性がやや低いとされているが,最近における活動性を否定できず,活動履歴を明らかにする必要があると考えられることから,本調査では反射法地震探査,ボーリングおよびトレンチ調査を実施した。