(3)最新活動時期

第6及び第1トレンチでは,断層上盤側のW層及びVb層の傾斜が急で,両層は断層により変位している可能性がある(図4−11−1図4−11−2図4−11−3図4−11−4図4−11−5図4−12−1図4−12−2図4−12−3図4−12−4)。また,第6トレンチでは,W層がVb層の上に乗り上げていることが確認され(図4−11−1図4−11−2図4−11−3図4−11−4図4−11−5),さらに,埋め戻し時に行った第6トレンチの増掘法面でも,Vb層にW層が乗り上げていることが確認された(図4−11−5)。したがって,Vb層堆積以降における断層活動は確実であり,Vb層とその下位のW層との境界部の14C年代は,約750y.B.P〜約650y.B.Pを示すことから,その活動は約650y.B.P以降となる。また,このことは,仮に下盤側のVb層の一部が,人工による暗渠であっても矛盾しない。

第1トレンチでは,急傾斜を示すW層に,U層がアバットしており,変位はU層に及んでいない(図4−12−1図4−12−2図4−12−3図4−12−4)ことから,本地点における六甲断層の最新活動時期は,U層堆積前と判断される。しかしながら,U層の14C年代値は約1270y.B.Pと下位層の年代値と逆転した値が得られた。

一方,第4トレンチでは,断層はIc層に変位を与えていないことが確認された(図4−15−1図4−15−2)。Ic層は非常に多くの炭質物を含み,同トレンチ中の同層の14C年代は,約980y.B.P〜約250y.B.Pの値であるが,バラツキも大きく,年代と層位関係の逆転も生じている。このことは,再堆積による古い試料の混入と考えられ,最も新しい約250y.B.Pの値が,Tc層の堆積年代を示しているものと考えられる。

以上のことから,本地点における六甲断層の最新活動時期は,約650y.B.P(cal:AD:1270〜1420)以降,約250y.B.P(cal:AD:1490〜1950)以前となり,この活動は西暦1596年の慶長伏見地震時の可能性が高い。