7−2 山崎断層帯周辺の現在の地震活動

山崎断層帯周辺の地震活動は,京都大学鳥取微小地震観測所が,1965年に兵庫,鳥取県内に5箇所の観測点を設けて常時観測を開始して以来,漸次観測点を増設して観測やデータ解析を行なってきた。京都大学防災研究所付属地震予知研究センターが発足してからは,中部,近畿,中国東部,四国東部など5観測所の高感度地震観測網のデータ統合処理が開始された。その後,地震調査研究推進本部が設置され,大学,気象庁,基盤観測網(Hi−net)のデータが統合処理され,より広域に地震活動が把握できるようになってきた。本節の震源分布図等は,京都大学防災研究所による震源及び気象庁による震源(気象庁,防災科学技術研究所,大学等のデータを文部科学省と協力し処理)を用いている。図1は,1965年以降(2000年3月まで)の地震分布を表した図である。

地震活動が活発な地域でまず目につくのは,淡路島北部から神戸・阪神地域にかけて(北東−南西方向)であり,1995年兵庫県南部地震及びその余震活動を表している。 その北東に位置する北摂・丹波山地域でも地震活動が活発である。

一方,兵庫県南部地震の余震活動にほぼ直交する格好の山崎断層帯に沿っても地震活動が活発である。地震活動が活発なのは,断層帯の北側5〜10km離れた所までであり,それより北側では地震活動が急激に不活発となる。これに対し,山崎断層帯の南側では地震活動が全体に活発であり,所々塊状に分布する傾向もみられる。多可郡加美町から氷上郡北東部にかけての地域でもやや活発な傾向が認められる。

暮坂峠断層北西部の直下に地震活動が活発な地域があるが,これは1984年のいわゆる山崎断層の地震の余震活動に相当する。大原断層−土万断層−安富断層では,これらの断層に沿って北側数km程度までの範囲に地震が集中する傾向が見られる。

図1 山崎断層帯周辺の地震分布

1965年1月1日〜2000年3月31日までに発生したM>1.5の地震をプロット

破線枠内は,図2の断面図に表現した地震分布の範囲を示す。

@ 大原断層, A 土万断層, B 安富断層, C 暮坂峠断層, D 琵琶甲断層, 

E 三木断層, F 草谷断層,  A 多可郡,  B 氷上郡 

図2は,震源分布深度を,山崎断層帯方向((a)断面),山崎断層帯に直交する方向((b)断面)で表した断面図である。この図から,震源の深度がほとんど20km以浅であり,10〜20kmの間に集中する傾向が読み取れる。

(a)山崎断層帯の方向(北西−南東)断面

(b)山崎断層帯に直交する方向(北東−南西)断面

図2 山崎断層帯周辺の震源分布深度

(a)山崎断層帯の方向(北西−南東)断面

(b)山崎断層帯に直交する方向(北東−南西)断面 

山崎断層帯周辺の震源(震央)分布を細かく見ると,地域により分布傾向が異なっているため,以下の4つの領域に分け,震源分布深度の傾向を検討した。

T:大原断層〜土万断層(図3)     

U:暮坂峠断層北西部〜安富断層西部(図4)

V:安富断層東部〜琵琶甲断層北西部及び暮坂峠断層南東延長部(図5)

W:琵琶甲断層南東部〜三木断層北西部(図6)        

Tの領域では,山崎断層帯(大原断層〜土万断層)を中心に幅約10kmの範囲に震源(震央)が集中する。震源分布深度は,概ね15km以浅で,断層帯の北側ほど浅くなる傾向が見られる。また, 大原断層付近では震源が比較的浅い地震が目につくほか, 大原断層より10km余り南側にも,地震のやや集中する場所(深度15〜18km)がみられる。              

Uの領域は,1984年のいわゆる山崎断層の地震及びその余震活動が集中した地域に相当する。震源(震央)分布は,暮坂峠断層北側に沿って延びている。一方, 震源の分布は, 暮坂峠断層を挟んで周囲3〜4kmの間に集中しており, その深度は概ね10〜20kmの範囲に入る。震源の分布は,鉛直より少し南に傾いており,一見その地表延長は安富断層に伸びているように見える。しかし,震源決定精度の問題や,震央分布が安富断層とは平行せず暮坂峠断層に平行していること等から,暮坂峠断層に関係した地震である可能性は高いが,より詳しい検討を要する。

Vの領域は,山崎断層帯西部と同東部の間(活断層が認定されない区間)を中心にし,安富断層東部から琵琶甲断層北西部にかけての地域に相当する。震源(震央)分布には,安富断層東部の北側を断層に沿って帯状の分布を示す他,顕著な方向性は認められない。震源の分布深度は概ね8〜16kmの範囲であり,安富断層の北側と暮坂峠断層の延長部に集中する傾向が見られる。

Wの領域は,琵琶断層南東部から三木断層の北西部にかけての地域に相当する。震源(震央)分布は,三木断層とは若干斜交するもののほぼ断層線に沿って並ぶ。震源分布深度は8〜15kmの間にほとんどが入り,三木断層を中心に幅約3kmの間に集中する傾向が見られる。

図3 大原断層〜土万断層付近の地震分布(上:震央分布と断面位置,下:断面)    

図4 暮坂峠断層北西部〜安富断層西部の地震分布(上:震央分布と断面位置,下:断面)

図5 安富断層東部〜琵琶甲断層北西部及び暮坂峠断層南東延長部の地震分布(上:震央分布と断面位置,下:断面)  

図6 琵琶甲断層南東部〜三木断層北西部の地震分布(上:震央分布と断面位置,下:断面)