4−2−3 調査結果のまとめ(Bトレンチ,Cトレンチ結果を踏まえて)

トレンチ調査では,暮坂峠断層の主断層と見られる破砕(粘土)帯が確認され,その北端部では,新期堆積層(図4−12中のB2, C2層)を切る断層(見かけ上下変位量15cm程度)も見つかった。主断層は,N50°Wの走向であり,地形的に見られるリニアメントとほぼ一致している(図4−11)。

しかし,新期堆積層を切る断層は,上下変位量が小さい上,安志地区で実施された安富断層のトレンチに見られるような横ずれ断層特有の大きな地層の擾乱は認められなかった。そのため,この断層は副次的なものである可能性もあると考え,さらにトレンチ(Aトレンチ)の両側に2本トレンチを掘削した(東側をBトレンチ,西側をCトレンチとした)。

Bトレンチ(写真4−21及び図4−14)の結果は, Aトレンチ同様,断層破砕帯中から新期堆積層中に延びる断層(FB−1:AトレンチのF−1の延長と見られる)が確認されたが,AトレンチのF−1同様, 10cm程度の上下変位を伴なっているものの, 大きな擾乱は認められなかった。

一方,Cトレンチ(写真4−23)では,断層破砕帯に沿っては,新期堆積層を切る断層は確認できず,それよりやや北側に新期堆積層を切る断層(N62°W,72°S方向)が見られる程度であった(写真4−24及び図4−15)。   

したがって,Aトレンチの調査で判明した断層変位が生じた時期(900年〜1410年前)の活動は,大きな横ずれ成分を持って連続する可能性は低いと判断される。このことから,暮坂峠断層は約1000年前の前後数百年以内に活動した可能性はあるものの,起震断層として活動したのではなく,安富断層などの活動に伴ない副次的に動いた可能性がある。