7 総合解析

平成13年度に実施した文献調査,空中写真判読及び地表踏査の結果をまとめて表7−1に示す。

調査地域のうち,東部に分布する六甲(桜が丘を含む),清荒神,塩尾寺及び小林のいずれの断層も,中位段丘面形成以降の活動があったことがほぼ確実である。これらの断層のうち,六甲断層については,長さが10kmに達し,右横ずれ地形も明瞭であり,完新世の沖積段丘面にも変位を与えている可能性が高い。

調査地域中部においては,有野,唐櫃,山田,射場山,湯槽谷,大月及び五助橋の各断層が分布しているものの,いずれもリニアメントのランクが低く,新しい時代における活動を示唆する地形・地質データに乏しい。また,「近畿の活断層(岡田・東郷編,2000)」では,有野断層,射場山断層,湯槽谷断層及び大月断層については,組織地形であるとしている。

一方,調査地域西部に分布する淡河,柏尾谷及び古々山の3断層については,新しい時代における活動の有無は不明であるが,本調査では,いずれもリニアメントのランクが高く,比較的系統的な右横ずれ地形が認められること,「都市圏活断層図(1996)」などでは,柏尾谷断層を活断層としていることから,新しい時代における活動があった可能性もある。

以上のことから,本地域における今後の活断層調査としては,まず,六甲断層の活動性に関する詳細な調査・検討が挙げられる。船坂地区では,断層活動によって生じたと推定される断層崖が良く保存されており,段丘堆積層を切る断層露頭が確認されていることなど,断層活動を示唆する痕跡が明瞭である。また,生瀬地区では完新世の沖積段丘面上に南側隆起の逆向き低崖が認められる。これらの地区において,予察的なボーリング調査あるいはピット調査を実施して,トレンチ調査により得られる成果の内容を検討した上で,最新活動時期等の活動履歴,特に慶長伏見地震時における連動性などを明らかにすることを目的に,トレンチ調査を実施する必要があると考えられる。

清荒神断層,塩尾寺断層及び小林断層については,断層通過位置周辺の人工改変が著しく,人口密集地となっているため,トレンチ調査用地の確保が困難と考えられる。また,塩尾寺断層については,既存資料より,基盤岩に200m以上の落差のあることがボーリングデータより判明している。これらのことから,清荒神断層,塩尾寺断層及び小林断層については,P波及びS波による反射法地震探査,ボーリング調査により断層の活動性を評価する必要がある。

淡河断層,柏尾谷断層及び古々山断層については,既往文献では上述の各断層よりも活断層の可能性がやや低いとされているものの,前述のように,本調査では,リニアメントのランクが高いことなど,最近における活動性を否定できない。この場合,これらの断層とその東方延長部の六甲断層との間,約5km間に明瞭な活断層が存在する可能性が低いことから,これらの3断層は,有馬―高槻断層帯や六甲山地南東縁断層帯とは別の起震断層帯になることも考えられる。この意味において,これら3断層の活動性の評価は重要と考えられ,トレンチ調査等により活動履歴を明らかにする必要がある。

なお,射場山断層については,地表踏査により土石流堆積面上に低崖が認められたものの,同様の地形が他の地点では認められないことから,土石流末端の地形とも考えられ,低崖の成因に関してさらに検討が必要である。

表7−1 調査地域における活断層評価一覧表