(4)トレンチ壁面に認められた断層の観察結果

@ トレンチ中央部よりやや南側下部(地形的に推定される安富断層のほぼ延長上)に,主断層が認められ,ほぼ鉛直方向に扁平な礫が断層に沿って引きずられる様に配列したり,明瞭なせん断面が認められた(断層の走向,傾斜N80°W90°)。

また主断層から派生した断層が主断層の両側に広がるように形成されていること等,横ずれ断層の特徴が認められる。

A 主断層から派生したとみられる断層が,西側壁面ではF−1〜F−7,東側壁面ではf−1〜f−5の各断層として認められ,その内沖積層(A〜B層)を切る断層は,数本認められ,西側壁面では,主断層から向かって右斜め上方に延び,東側壁面では主断層から向かって左斜め上方〜右斜め上方へ弓なりに延びているものが顕著である(F−1,F−2,f−1,f−2)。

また,西面,東面とも,この沖積層を切る断層周辺数十p〜1m弱の区間は破砕帯となっている。

B 最新のイベントを示す断層(F−1)は,A−2 層の下部(1600〜1700年Bp)を変位させておりA−1層(270〜710年Bp)〜A−2u層に覆われている。このことから最新のイベントは, 710〜1600年Bpに生じたことが判った。

C 主断層南側のD−1層(9290〜11770年Bp)は,主断層の繰り返しの活動によって大きくずり上げられた様子を呈し,その部分の礫は斜め〜鉛直上方に回転しているのが認められた。

又本層中の西面〜南面には,2次的に発生したと考えられるせん断面や直線状に配列した礫を認めることができ,その影響はC層にも及んでいるとみられる。

その他にも2次的に発生したと考えられる断層が西側壁面でF−9,南側壁面でF−10,東側壁面でf−6として認められた。

D 主断層を挟んで南側に層厚数10p〜1.7m程度で分布するC層(C−1,C−2:7520〜8880年Bp)は断層北側においては,東〜北側壁面に最大層厚50p程度で分布するのみであり,特に西側壁面の断層北側では,約9,300〜12,900年Bp以上を示すD層(D−1,D−2,D−3)の上位に1,700〜2,930年BPを示すB層が不整合に覆っていることが認められた。

よってその不整合の間隙は約4600年(地層の欠如している期間は2930〜7550年Bp)であった。

E 主断層南側D−2層(12360〜12880年Bp)は,主断層を挟んで北側では階段状に高度差約1.2〜1.5m程度変位しているのが認められた。

主断層北側下部(D−5層中)には姶良Tn火山灰(約2万4千年前)が認められ,主断層南側のトレンチ底面より行ったボーリング調査により同層と考えられる火山灰を底面GL−1.65〜1.80mで確認した。よってその高度差により約2.0〜2.2m程度変位していることがわかった。

また西側壁面において,C〜D層を不整合に覆うB−3層(2840〜2930年Bp)の垂直変位量は約0.4m程度であることから安富断層が垂直方向(いずれも北上がり)にも累積性をもっていることが判明すると伴に地層の欠如している約4600年の間にも何度かのイベントが起こって いる可能性が高いと考えられる。